三菱「デリカD:5」の顔が極端にいかつい理由 走破性を維持しながらも見た目が大きく変化

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ビッグマイナーチェンジの内容をざっと見渡しても、かなり大掛かりな改良が施された様子が伝わってくる。その背景には、デリカD:5はデリカの5代目として2007年1月に登場し、すでに12年が経過していることもあるだろう。一方で、クロカン4駆性能を備えたミニバンという唯一無二の存在が、この長寿をもたらしているはずだ。

デリカD:5の魅力は、先にも述べたようにパジェロに代表される悪路走破性をミニバンで実現しているところにある。その実力がどれほどかの一例として、三菱がパジェロで1985年以降12回優勝したパリーダカール・ラリーにおいて、2007年にはそのサポートカーとして7000キロメートルに及ぶ北アフリカの大地を走破しているのである。

4輪駆動による粘り強い走りはもちろんだが、それを支えるデリカD:5の車体は、たとえばスキーのモーグルのようなこぶが交互に連続する未舗装路において、対角線上のタイヤがこぶの上にあって車体に負担がかかるような状態でも、ミニバン特有のサイドドアを開け、再び閉めることができるほど剛性が高い。量産市販車で、それほどねじれの出ない車体剛性を備えたクルマは世の中に多くはない。

パワフルな走りは配達車両としての実用性から

2002年、2003年にパジェロでパリーダカール・ラリーを連覇した三菱契約ラリードライバーの増岡浩氏による、急斜面をパジェロやアウトランダーで上下してみせる模擬走行も全国各地で行われている。そこでもデリカD:5がパジェロと同じように急斜面を上り下りする。夏に恒例の三菱スターキャンプというアウトドアイベントでは、オートキャンプ場内を走るほかのミニバンが未舗装の轍(わだち)にハンドルをとられ、よろよろ走るが、デリカD:5は平然とテントが立ち並ぶ無舗装路を走り、悪路走破性能の高さを目の当たりにすることができる。

増岡氏は、「気候変動などで年間を通じ災害が日本各地で起きるようになったいま、自宅まで自分のクルマで帰りたいと思うなら、三菱車を選ぶといいのでは」とさえ言う。日常何事もなく使う舗装路も、豪雨や豪雪などにより瞬時に悪路と化すことが身近になった今日、増岡氏の言葉の重みを実感する人もあるだろう。

三菱デリカは、1968年にデリカトラックとして誕生した。デリカという車名の由来は、デリバリーカー(配達車両)からきている。荷物や人を目的地へ確実に運ぶ実用性を重んじて誕生した様子がうかがい知れる。翌1969年には、ワンボックス型のデリカコーチが追加された。

1979年に2代目のデリカスターワゴンへフルモデルチェンジしたところから乗用車の扱いになり、1982年に小型ワンボックスカーとして初めて4輪駆動車が車種追加となった。またロングボディ車には、ディーゼルエンジンが追加搭載されている。3代目までは運転席下にエンジンを積む、キャブオーバーと呼ばれるワンボックス車だったが、1994年にフルモデルチェンジした4代目のデリカスペースギアからフロントエンジンのミニバン的姿となり、現在の5代目であるデリカD:5に至る。デリカD:5では、それまでの後輪駆動から前輪駆動を基にした4輪駆動へ変更となっている。

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