幸楽苑が「1人焼き肉」の郊外店を出すワケ 本格的なチェーン展開は国内で初めて

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また、客単価2000円のいきなり!ステーキは所得水準の高い都心部では強いが、郊外での展開においては力強さを欠く。従来、郊外で強みを発揮してきた幸楽苑ホールディングスは「良い立地があれば出店したい」とするものの、直近の3カ月で同社によるいきなり!ステーキの出店はなく、今後の出店計画もない。

ラーメン店同士の自社競合を回避

そこで、肉業態の第2弾として、成長が期待される焼肉ライクと手を組む。今回の焼肉ライクでも、10店すべてが既存の幸楽苑からの業態転換を計画する。新規出店の余地が限られる中、ラーメン店同士の自社競合を解消し、グループ全体の客数を増やして採算の向上を図る狙いだ。

幸楽苑ホールディングスの新井田昇社長(左)とダイニングイノベーションの西山知義会長(記者撮影)

幸楽苑ホールディングスの新井田昇社長は、「郊外でも個食化が進んでいる実感がある。焼肉ライクの話をいただいたときに、これは人気が出るのではないかと直感した」と話す。ダイニングイノベーションが2018年8月に直営でオープンした新橋の1号店は平均月商1600万円。対して、今回の郊外店は家賃や人件費の負担が少ないこともあり、「月商1000万円、年商1億円で御の字」(新井田社長)という。

ダイニングイノベーションとしても、展開する地域のすみ分けができる。同社が運営する焼肉ライクは現在2店舗。今年4月までに、渋谷や横浜、秋葉原、五反田での直営の新規出店を予定するが、すべてが都心立地である。グループとしてロードサイドでの本格運営の経験が少ないため、今回郊外を中心に500店を持つ幸楽苑ホールディングスに郊外の展開を託す形となった。

とはいえ、いきなり!ステーキが郊外で苦戦していることから、客単価が比較的低い焼肉ライクでも同様の懸念はある。従来の焼き肉店と比べれば低価格でも、ほかの飲食店全般との競争に打ち勝っていくには、コストパフォーマンスの高さを訴求していく必要があるだろう。滞在時間を抑えて、回転率を向上し続ける努力も求められる。

郊外にも進出を始める「1人焼き肉」は、新たな市場を生み出すか。外食企業の挑戦に注目が集まる。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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