再発防止策も機能せず、ANAに相次ぐ不祥事
12月7日、全日本空輸(ANA)羽田発能登行き749便。機長から規定値を超えるアルコール反応が検出され、5分の遅延が発生した。同社は今年8月以降、アルコール反応による機長交代などで旅客機が遅れるケースが続出。社内規定を変更し、防止策を発表した直後の再発だった。実はこの3日前、12月4日にも乗客の搭乗確認ミスで出発が48分遅れた不手際があったばかり。理由は搭乗券のチェック漏れという何とも単純なミスだ。
「不祥事の連鎖を断ち切れていない。極めて重大な事態に陥っている」--。ANAの山元峯生社長は11月下旬の定例会見で危機感をあらわにした。が、それでもなお「お詫び」は繰り返されている。
今年に入って相次ぐANAの不祥事。春に展開した国内線上級席の誇大広告で公正取引委員会から排除命令を受けたのが8月末。だがその直後にも、景品の航空券が上限価格超過の可能性があるとして景品を差し替える不手際があった。9月中旬には、大規模なシステムダウンで大量欠航を起こす。昨年5月に同様のトラブルで再発防止を打ったにもかかわらず、だ。
ミスが相次ぐ理由として、山元社長は「管理職が部下に丸投げしている」と指摘したうえで「管理職が部下の一挙手一投足を取るときつくなる。そのバランスをどう取るかが問題だ」と持論を展開。自由闊達な社風が背景にあるとの言いぶりだ。
だが、ある業界関係者は指摘する。「コスト削減などは(経営再建中の)日本航空(JAL)よりANAのほうが一段と締め付けがきつい」。これまで社内一丸となってJALの背中を追いかけてきたANA。1人当たりの生産性向上のため、仕事量が増えていることに不満を持つ社員は少なくない。また、業界内部からは「JALの自滅で転がり込んだフラッグシップの座に慢心もあるのでは」との声も聞こえてくる。
かつてはJALの“お家芸”だった不祥事の連鎖。急降下はその小さなミスから始まった。ANAも早く断ち切らなければ、取り返しのつかない事態を起こしかねない。
(冨岡 耕 =週刊東洋経済)
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