中後悠平、二度「戦力外」を受けた男の恩返し 理解者だった義父と突然の別れ、激動の1年

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「アメリカにおる時も、義父は慣れないインターネットを使って、その日の試合で僕が投げたかどうか、抑えたかどうか、いつも戦績を調べていたらしいです。僕には連絡してこないんですけどね。でも、陰で応援してくれていて。最近は僕がずっと打たれていたんで、抑えた時は『今日はうまい酒が飲める』と喜んでくれていたみたいです」

人生で二度目の戦力外通告により、野球で恩返しをするという願いは叶わなくなったかに見えた。そんな矢先、思わぬオファーが中後のもとに飛び込んできた。左のリリーフピッチャーの補強を考えていた横浜DeNAベイスターズが、中後に興味を示したのだ。

時折、笑顔を見せた中後悠平。『プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男達』(TBS系)は12月30日(日)夜11時から放送です(写真:TBSテレビ提供)

アメリカでの戦力外通告からわずか11日後、横須賀にあるベイスターズの総合練習場で、シーズン途中での異例の入団テストが行われた。野球人生をかけたマウンドに、中後は立っていた。

ベイスターズの一員として新たなスタートを迎えた中後

持ち味のキレの良いストレートとスライダーを中心に、中後は好投を見せた。終わってみれば、打者7人に対して三振2つ、ヒット性のあたり一本に抑えていた。

そして、今年7月4日にベイスターズは中後の獲得を発表した。横浜DeNAベイスターズの投手として、中後は新たな人生のスタートラインに立ったのだ。球団は家族全員が住む神奈川県が本拠地。そして何より、義父はベイスターズの大ファンだった。

戦力外通告を受けて帰国して以降、中後は入団テストやトレーニングの合間を縫って、毎日のように義父を見舞っていた。会うたびに、義父の病状が進行していることにも気がついていた。

「ほぼ毎日病院に行ってたんですけど、会うたびに体も痩せていって、声も出ないようになって。最後はロクに声もかけられずに、何も言えず……悲しいですよね」

それでもなお中後は、ベイスターズのマウンドで投げる勇姿を、義父に見せる日が来ることを願わずにはいられなかった。メジャーでその姿を見せることはできなかったが、今度こそ結果で恩を返したい、自分が励ます番だ、そんな強い思いを胸に秘めていた。

だが無情にも、そんな中後の願いも叶うことはなかった。実の父親のように慕っていた義父が、この世を去ったのだ。癌の宣告を受けてから、わずか1カ月程度の出来事。やりきれない思いが口をついた。

「ホンマに、恩返しの『お』の字すら返せてないですよね。実の親以上に世話をしてくれて、ホンマに……何も言えないっていうか。ホンマに何もできなかったですよね……」

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