保険のSOMPOが「テーマパーク」を目指す理由 次期経済同友会トップが語る保険業界の未来
ただ、問題もある。「国籍は?」「離婚歴は?」「クレジットカードの有無は?」などとデータ解析で細分化していくと、保険料が高騰する人と逆に相当に低い人が出てくる。大数の法則を働かせて、保険料を平準化する保険の機能が壊れてくる。
リスクの高い人が保険に入らず、そうでない人が保険に入ることになる。社会のありようとしてはそれでよいのか。技術進歩に合わせて、都合がよいから、便利だからと保険商品・サービスを提供していくと、サステイナブルな社会を破壊していくことになる。これは絶対にいけない。
保険は原状復帰はできるがプラスにはできない
――その中で、SOMPOホールディングスはどう変わっていくのでしょう。
テーマパークのようにしたい。私どもは「安心・安全・健康のテーマパークを目指す」とずっと話してきた。保険は大事な機能ではあるが、われわれの目指すビジネスモデルは保険ではなく、テーマパークだ。
社員の間では耳にタコの話なのだが、少し説明しよう。
テーマパークとは抽象的な概念を目に見える形に変換するものだ。触れられるとか、味わえるとかね。
ウォルト・ディズニーの世界観を形にしたのがディズニーランドだが、僕らの世代は日光江戸村のほうがピンとくる。「江戸時代」って言われても現実感がないけど、江戸村へ行って、見たり、触ったりすると感じが違ってくるよね。
保険の場合は、原状復帰までの機能を持っているが、マイナスやゼロをプラスにまで変える機能はない。「今が健康だったら、幸せだったら、それを維持したい」。そのときに機能は果たせるが、さらにハッピーになりたい場合、われわれがやれることはゼロだろう。プラスにはできないんだ。
でもテーマパークは違う。ディズニーランドや日光江戸村に行ったら、悲しかった気持ちが普通に戻る、楽しくなるでしょ。テーマパークにはマイナスをプラスに変える機能がある。
「あなたは困ったとき、まさかのとき、どうするのですか!」「大事な家族はどうなりますか!」というのが保険会社のセールスだ。ホラーストーリーとまでは言いたくない。われわれにとっては、ビジネス上、とても大事な部分ではあるのだが、もうこれだけじゃダメだろうとも思う。
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