金正恩氏が歴史的「訪韓」を遅らせている事情 暗殺リスク回避に加え、外交上の計算も

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日程については、韓国大統領府が一部報道を即座に否定する一方、別のメディアが違う日程の可能性を報じるといった具合。旅程については、正恩氏が韓国高速鉄道「KTX」で釜山(プサン)に赴き、ヘリコプターに乗って済州(チェジュ)島にある韓国・最高峰ハルラ山の頂上を訪問し、ソウルにある名門の「グランド・ウォーカーヒルホテル」に宿泊する可能性が取り沙汰されている。

ただ外交関係者の間で流れている観測として筆者が12月に入ってから耳にした話では、訪韓は日帰り日程で、ソウル以外には済州島のほかに足を延ばすことはなく、年内の訪韓実現もありえない、とのことだった。

ソウルで何を話し合うのか

では、仮に実現した場合、正恩氏の訪韓はいったいどのような形式で行われ、何が議題になるのか。さまざまなリーク情報が騒音のように飛び交っている中では確定的なことは言えない。ただ2018年に入ってから正恩氏が行ってきた首脳外交に目を向けると、日程などの点で一定の傾向が浮かび上がってくる。

正恩氏は2018年に3度訪中し、シンガポールを一度訪れているが、75%の確率で日程は複数日に及んだ。平壌に韓国の文氏、キューバのミゲル・ディアスカネル国家評議会議長を招いたときも、日程は1日限りのものではなかった。板門店で行われた2度の南北首脳会談は、地理的に近いこともあって日帰りとなっている。首脳外交が複数日にわたる場合はトップ会談のほかに、晩餐会や食事会、経済関連の視察が行われている。シンガポールの米朝会談と文氏の訪朝では、観光地の訪問も日程に含まれていた。

もちろん、2月の平昌冬季五輪に関連して行われた妹の与正氏による訪韓は3日間にわたっており、複数日の滞在がありえないというわけではない。

しかし与正氏と同じく宿泊を含む日程で正恩氏が訪韓しようとすれば、護衛部隊やプロパガンダ当局が思いとどまらせようとするはずだ。もちろん正恩氏が強く望めばいかようにでもなるはずだが、それにはリスクに見合った成果を上げられると確信できるような条件が整う必要がある。米朝関係が劇的に改善するようなことでもあれば、ひょっとすると来年にもそうした条件がそろう可能性もなくはない。ただ、今のところ望みは薄い。

訪韓が実現した場合の議題としては、これまでの経緯からいって以下のようなテーマが中心になるだろう。

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