フランス「格安」高速列車、LCCではない真の敵 「身内」のTGVと競合してでも他社参入を牽制

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そもそもOUIGOが誕生したのは、LCCや格安路線バスへの対抗はもちろんだが、鉄道の上下分離とそれに伴うオープンアクセス制度によって、フランス国内での列車運行事業に参入が予想される「Thello」(テッロ)を牽制する意味合いが強かった。

早朝、パリへ向けて走るテッロの夜行列車。イタリア鉄道の子会社であるテッロは、現在はイタリアからの国際列車を運行している(筆者撮影)

テッロはイタリア鉄道(FS)のフランス子会社。現在はヴェネツィア―パリ間の夜行列車とミラノ―マルセイユ間の特急列車を運行しており、その事業はイタリアとフランスを結ぶ国際列車にとどまっているが、同社のCEO、ロベルト・リナウド氏は今年3月、フランス国内高速列車事業へ参入を検討していると表明した。

同社の計画するフランス国内高速列車については具体的な発表はないが、TGVより低価格で、パリの主要駅を発着すると推測されている。また、現在フランス国鉄が運行しているパリ―ミラノ間やブリュッセル方面行きといった、フランスを拠点に他国とを結ぶ国際列車については、2020年からの運行開始をすでに表明している。

郊外発着では優位が保てない

パリ・リヨン駅。12月のダイヤ改正からOUIGOが乗り入れを開始した(筆者撮影)

今回、フランス国鉄がパリ・リヨン駅発着のOUIGOを運行開始した背景には、フランス国鉄の危機意識が見て取れる。もしもテッロがTGVより低価格で、しかもパリ主要駅発着の新しい高速列車を走らせることになれば、郊外発着のOUIGOの優位性がなくなるからだ。

OUIGOのサイトを見ると、パリから各都市への片道運賃が10ユーロ(約1300円)から、という文字が並ぶ。パリ―リヨン間は、日本で言えばおおむね東京―京都の距離に匹敵するので、10ユーロという金額はまさに破格と言っていいだろう。

フランス国鉄は当初、OUIGOについては採算度外視でなりふり構わず、他社に対して参入できるものならしてみろ、と言わんばかりに敵意むき出しで運行を開始した。現状では自社のTGV以外に競争相手はなく、ギリギリの低運賃のおかげで利用率も好調だが、テッロの参入後もこの好調と運賃を維持できるかが注目される。

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