フランス「格安」高速列車、LCCではない真の敵 「身内」のTGVと競合してでも他社参入を牽制
フランス国鉄(SNCF)は2018年12月の冬ダイヤ改正から、パリの主要駅であるパリ・リヨン駅への格安高速列車OUIGO(ウィゴ)乗り入れを開始した。同列車のパリ主要駅乗り入れは2017年12月のモンパルナス駅、2018年7月の東駅に次ぎ、3例目となる。
OUIGOはフランス国鉄が運行する低運賃の高速列車。乗車券はインターネットによる事前販売のみで、車両は一般の高速列車TGVデュプレックスと同型だが座席間隔を詰め、車内サービスも省いている。持ち込める荷物もリュックサック程度の小さな手荷物2個、もしくは航空機の機内持ち込みサイズと同等のスーツケース1つと手荷物1個のみで、それより大きい荷物や手荷物が3つ以上の場合は追加料金が必要と、飛行機におけるLCC(格安航空)の鉄道版と言える。
「格安」の理由だった発着駅の制約
主要空港以外を利用するケースが多いLCCと同様、パリのOUIGO発着駅も当初は主要駅でなく、ユーロ・ディズニーランドがあるマルヌ=ラ=ヴァレ・シェシー駅のみであった。同駅はパリの郊外約30kmのベッドタウンにあり、中心部から列車で40分かかる。つまり、OUIGOは低運賃と引き換えに時間を含め多くの制約がある高速列車という位置づけだ。
変化が起きたのは2017年12月。パリ・モンパルナス駅に、フランス西部のボルドーやナント、レンヌなどへ向かう列車が乗り入れを開始した。2018年7月からは東部のナンシーやメス、ストラスブールなどへの列車がパリ東駅に発着するようになり、そしてこの12月にパリ・リヨン駅発着の列車が登場した。マルヌ=ラ=ヴァレ・シェシー駅発着の列車も引き続き運転される。
パリの主要駅に発着するとなれば、車内サービスの有無や、持ち込める荷物の個数制限などで違いはあるものの、通常料金のTGVではなくOUIGOを選ぶ人が出てくるかもしれない。それでもパリ主要駅発着のOUIGOを運行開始したのはなぜだろうか。
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