iPhoneに翻弄されまくる「日の丸液晶」の窮地

有機EL量産はまだ、頼みの「XR」不振が響く

ただこうした状況下、JDIに救いの手を差し伸べたのもまたアップルだった。2018年10月に同時発売した新モデル3種のうち、最も廉価なXRに液晶モデルを残した。そしてここに、JDIが開発に注力してきた新型液晶「フルアクティブ」を採用したのだ。フルアクティブは、パネルの縁ギリギリまで液晶が表示され、デザイン性が高いのが特徴のパネルである。

フルアクティブの採用を受け視界が開けたJDIは、2018年3月末に第三者割当増資などで計350億円を調達することを発表した。筆頭株主のINCJもJDIの石川県・能美工場を買い取ることで事実上200億円を支援。こうして調達した資金は、アップルからの受注をこなすための運転資金に充当されたと見られる。

目論み外れたフルアクティブの採用

アップル向けの出荷が拡大することで、2018年度は通期で2~3%の営業利益率を出すという強気の会社計画を発表(前年度は617億円の営業損失)。月﨑義幸社長は「何が何でも5期連続赤字は避けたい」と意気込み、「5月の連休もお盆休みも返上で働き、生産立ち上げの陣頭指揮に全力を尽くしてきた」(関係者)という。

JDIが開発に力を入れてきた新型液晶「フルアクティブ」。2018年10月にアップルが発売した新型モデル「XR」に採用されたが、販売不振による減産の見通しで業績下方修正の可能性が高まっている(写真:ジャパンディスプレイ提供)

が、JDIの決死の努力もむなしく、2018年上期(4~9月)の実績はJDIにバックライトを供給するメーカーの納入が遅延したことなどが響き、パネルの本格出荷が1カ月遅延、144億円の赤字に沈んだ。

下期も「iPhone XR」の販売不振により当初見込みより減産される見通しだ。JDIは10月末の決算発表で、2019年3月期の営業利益率見通しを1~2%に下方修正。5期連続最終赤字が現実となる可能性は高まっている。

来2020年3月期には、LGとシャープによる「iPhone XR」向けのパネル供給量が上がり、JDIの出荷量はさらに下がると言われている。もし、「iPhone XR」の不振を受けて、アップルが2019年の新製品から液晶をなくしたとしたら、JDIにとっては死活問題だ。

かといって、脱アップル依存への取り組みもまだ途上だ。最有力なのは車載向けのパネルで、着実に成長はしているものの、新規採用には数年の時間を要するうえに、大量に数が稼げるビジネスではない。

家電メーカーのアクア(前ハイアールアジア)出身でマーケティング統括者の伊藤嘉明常務執行役員は、12月4日に開いた新規事業発表会で「JDIはパネル屋から脱却する」と宣言。ディスプレイ内蔵のバイクヘルメットなどのBtoC製品や、バス停などのインフラ向けディスプレイ、パネル生産技術を応用したセンサーへの新規参入などを打ち出した。

だが、これらが業績貢献するようになるまでの期間、体力が持ちこたえられるかは不透明だ。これまでJDIへ救いの手を差し伸べてきたINCJも、親会社であるJIC(産業革新投資機構)が経産省との対立で空中分解したことから、身動きは取りにくい。体内にすっかりまわった「りんごの毒」の血清が見つからぬまま、JDIはいよいよ難しい局面を迎えている。

『週刊東洋経済』12月22日号(12月17日発売)の特集は「GAFA全解剖」です。
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