iPhoneに翻弄されまくる「日の丸液晶」の窮地 有機EL量産はまだ、頼みの「XR」不振が響く
4社の時価総額は合計300兆円超。日本の株式市場全体における時価総額のおよそ半分を占めるIT巨人たちが、「GAFA(ガーファ)」と呼ばれ始めたのは最近のことだ。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの一挙手一投足は世界中の注目を集め、多くの日本企業にとってみずからのビジネスを左右し、時には市場を奪う恐怖の対象にもなっている。
『週刊東洋経済』は12月17日発売号で「GAFA全解剖」を特集。あらゆる産業や社会生活に影響を及ぼす巨人たちの実像に迫っている。
そんなGAFAの一角、アップルに振り回されているのが、液晶パネルを供給するジャパンディスプレイ(JDI)だ。アップルが2018年10月に発売したiPhoneの新モデル「iPhone XR」(税別8万4800円~)の想定以上の不振を受け、かつてない窮地に立たされている。株価は12月11日に上場来安値の52円まで落ち込んでいる。
JDIは政府系ファンド、産業革新機構(INCJ)の主導のもと、日立製作所、東芝、ソニーの液晶部門を統合して2012年に設立された”日の丸ディスプレイ連合”である。同社のまだ浅い歴史は、アップルによる急な受注量の増減産やパネル価格の値切りに翻弄されてきた歴史といって過言ではない。
サムスン製の有機EL採用が大打撃
特に打撃だったのは、2017年11月発売の「iPhone X」にJDIがまだ量産に追いついていない高精細パネルの有機ELが全面採用されたことだ。これにより、従来のJDI、シャープ、韓国LGディスプレイの3社供給体制に、有機ELを供給するサムスンが加わりJDIのシェアは大きく低下した。アップルからの前受け金1700億円で建設され2016年末に稼働した石川県・白山工場の稼働率が、2017年10~12月には6割以下まで低下したことなどが打撃となったことを主因とし、2018年3月期の決算では1000億円を超える設備の減損も計上した。
2017年段階では、アップルをはじめとしたスマートフォン端末メーカーが有機ELパネルをサムスン1社から調達するリスクを分散すべく、JDIが有機ELを量産するための資金を援助するという計画があった。JDI側は2018年3月末をメドに契約を締結する算段だったが、韓国LGディスプレイや中国BOEなど、スマホ向け有機ELの量産に成功したメーカーは増加(2018年の新型iPhoneからはLG製有機ELパネルも採用されたとみられる)。提携話は、現在、宙に浮いている。
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