京セラやシャープ、太陽光で巨額損失のなぜ 成長が鈍化する太陽光市場で膨らむ損失

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ただ、京セラの太陽光発電事業の苦戦は原材料高だけが原因ではない。太陽光を含む生活・環境部門は今期、原材料費の損失計上がなくても170億円の赤字予想だった。

そもそも中国勢との激しい価格競争にさらされているうえに、2019年には再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が開始から10年が経ち、終了するものが相次ぐ。

FIT関連の事業はすでに需要が想定以上に落ち込んでおり、黒字化への足かせとなっている。同社は拠点集約などでコスト低減を進めており、谷本秀夫社長は10月30日の決算説明会で「10月に拠点集約がほぼ完了した。来期(2020年3月期)の黒字化は難しいかもしれないが、再来期(2021年3月期)には黒字化できるとみている」と意気込んでいた。

京セラの損失計上を、市場はおおむね好意的に反応した。発表直後の11月29日に京セラ株は前日に比べ5%近く上昇。これは原材料高によって苦しんできた太陽光事業がこれで好転するとの期待からだろう。

魅力的でも危うい太陽光市場

太陽光で痛手を負ったのはこの2社だけではない。老舗の化学メーカーであるトクヤマは2016年、2000億円以上を投じてマレーシアに完成させた太陽電池用多結晶シリコンの生産拠点を減損処理し、わずか100億円で売却せざるをえなくなった。理由は同じくポリシリコンの価格下落。生産コストよりも販売価格のほうが低い「逆ザヤ」状態に陥ってしまったからだ。

最近では、太陽電池用シリコンウェハーをスライスするダイヤモンドワイヤを販売する中村超硬が2018年4~9月期決算で、在庫評価損や減損特損を計上したことで、83億円の最終赤字を計上し、債務超過に転落した。

主戦場の中国で、2018年初からウェハーメーカーの生産調整が続いたうえ、政府が補助金削減による引き締め策に打って出たことで、販売価格が一気に7割減となった。「ここまでの価格下落は想定以上だ」(中村超硬)。

実際、急成長を続けてきた太陽光発電市場全体も、今年、突然の停滞に見舞われている。自治体や企業向けに太陽光発電導入のコンサルティングをしている資源総合システムによると、2018年の太陽光発電市場は前年比マイナス15%に落ち込んだ可能性があるという。

調整局面が続く市場環境の下、巨額損失の教訓をどう生かすのか。各社は事業戦略の練り直しを迫られている。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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