シャープ「世界の亀山」液晶工場が陥った窮状 外国人労働者3000人解雇の裏に「空洞化」

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そもそも3Dセンターモジュールは製造工程が複雑で、歩留まりが低迷していた。シャープ関係者によれば、鴻海と、傘下の台湾タッチパネルメーカーGIS(業成)の責任者が亀山工場に赴き、陣頭指揮にあたったという。

そんな中、鴻海が中国にあるGISの工場へ生産を移管すると決めたのだ。その理由は不明だが、なかなか立ち上がらない生産を見かねた鴻海が、見切りをつけた可能性はある。「(鴻海の)テリー・ゴウ会長が、亀山の歩留まりが上がっても日本国内では割に合わないと判断したのかもしれない」(みずほ証券の中根康夫シニアアナリスト)。

かつて亀山工場で生産されていた液晶テレビ「アクオス」はシャープの屋台骨となっていた(写真は2004年開催の家電見本市「CEATEC」、撮影:吉野純治)

ヒューマンの説明によれば、最終的に今年10月までに3000人弱が離職した。ただ、三重県庁の雇用対策課担当者によれば、シャープ側は県庁に対して今年3月に500人、7月に250人の計750人が離職したと説明しており、離職者数に大きな食い違いがある。

センサー部品の企画・開発は亀山で続いているというが、生産ラインはいまだ空いたまま。同工場ではiPhone向けの液晶パネルも生産しているが、新モデルの減産により今期は苦戦する可能性が高い。亀山工場の稼働率は激減するもようだ。

シャープ生産の海外移管が止まらない

鴻海がシャープの買収を決めた理由は、主力であるEMS(電子受託製造)のパイ拡大と、同社が持つ技術力である。コスト競争力のないシャープの国内生産を、鴻海グループの拠点も含めた海外工場へ移管することは買収時からの既定路線だった。

「日本製」をウリにするシャープの冷蔵庫だが、2019年には海外に生産を移管することが決まっている(写真はビックカメラ有楽町店、記者撮影)

一部の液晶パネルの生産はすでに順次、鴻海や傘下のイノラックスの拠点へと移管が進んでいる。さらに2018年末までに栃木・矢板工場がテレビ生産から、2019年9月には大阪・八尾工場での冷蔵庫生産からの撤退も予定されている。

そのうえでシャープは、付加価値の高い技術の開発と、最終製品のブランド力向上に努めるというのが、鴻海傘下でのシャープ再生の筋書きである。グループ内での生産最適化といえば聞こえはいいが、「何の生産をどこに移すかを決めるのは鴻海であり、シャープ側に拒否権はないのが実情だろう」(シャープに詳しいDSCCアジア代表の田村喜男氏)。

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