やたらと目撃談が出る俳優・佐藤二朗の胸中 「レンタルビデオ店の店員が佐藤二朗」?
昔、松尾スズキさんからは「佐藤くんはアレだね、家具の役が合いそうだね」と言われた。どう合うかは、いまだに不明だ。そもそも家具の役ってなんだ。そう思うのと同時に、「俺、できるかも、家具役」とも思う。家具役を演じ切る勝算はある。嘘。あるかいな、そんなもん。
妻は更に辛辣だ。かつて、真顔で「君、弁当箱に似てるね」と言われた。確かこの時は「そうかな」と力なく返したはずだ。むしろ「そうかな」以外に返す言葉がなかった。もっとひどいのは、「君、田んぼの畦道(あぜみち)に似てるね」と言われたこともある。この時も「そうかな」と力なく返したはずだ。いや、この時の記憶は曖昧だ。多分、ショックのあまり自衛本能でこの時の記憶を抹消しようとしたのだろう。究極は、「君、便器に似てるね」。この時は、笑ったと思う。ただただ、笑ったと思う。泣きながら笑ったと思う。
「どこにでもいる顔」だからこそ、「どんな役にもなれる」
まあ妻は、すべてギャグで言ったのだろう。ギャグでなければ、便器と婚姻関係を結んだ妻が不憫でならないが、とにかく、かように僕は色んな人(人以外も含む)に似ていると言われる。一時期、そんな「どこにでもいる顔」というのは、役者としてどうなんだろう、と思い悩んだこともある。まあ畦道や便器に似た顔がどこにでもいるとは思えないが、とにかく今は、「どこにでもいる顔」だからこそ、「どんな役にもなれる」と開き直るようにしている。開き直らなければやっていけない。
とにかくアレだな、日本のどこかにいるであろう、三越くん。お互い、頑張って生きていこうな。
(文:佐藤二朗)
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