ジャカルタ「歩かない」街に地下鉄は根付くか 車社会「駅を出ても歩道がない」は解決する?

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だが、無料低床バスと配車アプリの浸透がこれを解決するだろう。

整備されたスディルマン通り。車線中央がバスレーン、歩道寄りに走るオレンジ色のバスが低床バス(筆者撮影)

専用レーンを走らない低床バスは数百mごとにこまめに停車するため、駅出口近くにバス停を設置すれば、スディルマン通り沿いのおおよそのオフィスビルには簡単にアクセスできるようになる。また、南部の高架区間は基本的に住宅地が広がっており、この区間の二次アクセスは配車アプリが担うことになろう。実際に、MRTJ社は「グラブ」とMRTの運賃が一括支払いできるアプリを構築中だ。

残念なのは、日本の地下鉄のように駅とショッピングモールを地下通路で結ぶような気運にはなっていないことだ。いまだに当地ではMRTの利便性、特に高級モールの客になりえる人たちを運ぶという認識がないからだ。

しかしながら、MRTJの沿線であるジャカルタ南部は特に閑静な高所得者向けの住宅が広がるエリアで、日本人在住者も多い。だからこそ、開業当初からしっかり乗客を獲得し、将来的には自宅から目的地まで、雨にも濡れず、暑さ知らずでアクセスできるインフラに進化してもらいたいものだ。そうすれば、インドネシア人の心をつかむのは間違いない。

交通中心の街づくりは根付くか

アジア大会後、工事が始まった駅入り口部分。以前は中央分離帯部分にアジア大会のマスコットが設置され、車線は直線に整えられていた(筆者撮影)

一方、公共交通周辺の整備が進む契機ともなったアジア大会は、MRTJ関係者にとっては目の上のたんこぶでもあったという。景観保護や渋滞緩和のため、さらに一部区間がマラソンコースとなったこともあり、特に地下区間では各駅部の工事が1カ月強進められなかったからだ。アジア大会のジャカルタ開催が決定したのはMRTJ南北線の着工後であり、作業工程に大会のことは加味されていなかったのである。

これは2019年3月開業という目標にとって大きなプレッシャーだ。職員の習熟訓練などを考えると、相当切羽詰まったスケジュールであるものと推測される。実際の作業に従事する日系企業は、あくまでもMRTJ社からの受注業者である。良かれと思って立案したものも、インドネシア人幹部に修正されるのが現実だ。そして、日本政府との板挟み状態でもある。10月24日にはMRTJ南北線第二期区間の約8kmも日本タイドでの円借款供与が発表されたが、受注する日系企業にのしかかる責務も大きい。

それでも、きっと来年3月には、日本式の都市鉄道がジャカルタの街を走り出すのを見ることができるだろう。1日当たり17万人という開業時の需要目標は、TDM(交通需要マネジメント)を踏まえての数値である。現状を見るなり、クリアするのは容易だろう。その次のステップにあるのはTOD(公共交通指向型開発)である。ジャカルタに鉄道を中心とした街づくりが実践されることを願っている。

高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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