ジャカルタ「歩かない」街に地下鉄は根付くか 車社会「駅を出ても歩道がない」は解決する?
そして、もう1つ忘れてはならないのがオンライン配車アプリの浸透である。これを公共交通と呼ぶかどうかについては議論があるだろうが、インドネシアでは公共交通インフラが整備されるまでの暫定措置として、運輸省が配車アプリを公共交通とみなし、営業許可を与えている。
インドネシアでは従来から、地元のおやじたちが既得権益的に営業していたオジェックと呼ばれるバイクタクシーが「世界一歩かない」と言われる人々の生活を支えていたが、地場系アプリの「ゴジェック」やマレーシア系アプリの「グラブ」の参入により、近年急速にオンライン化が進んだ。いつでも、だれでも、どこでも、適正価格でバイクや車が呼べるようになったのは革命的であり、配車アプリのない生活には、もはや戻れないというのが現実だ。
逆に、かつて市内を縦横無尽に走っていた伝統的なミニバスやライトバンの類いはもはや青息吐息、数年以内に多数の路線が廃止になるのではないかという見方もある。交差点だろうが踏切前だろうがお構いなしに客を集めるミニバスが姿を消すインパクトは大きい。
KCIは会期中、大会会場最寄り駅の掲載された地図を主要駅で配布していたが、郊外の会場などトランスジャカルタとの乗り継ぎでアクセスできない場所については、駅からの二次交通として旧態依然としたミニバスは見限ったのか「配車アプリなどをご利用ください」と案内していた。
交通の整備はMRTに追い風
さて、筆者はこれらの事象が、わが国の円借款事業として整備されるMRTJ南北線にとって追い風になるものと考える。同線の工事は進捗率が9割を超え、いよいよ佳境に差し掛かりつつある。アジア大会開会式直前の8月15日に試運転列車がルバック・ブルスからブロックMまで地上区間全線を走破し、その後は地下区間を含め、連日メーカーの手による車両の走り込み試験が続いている。
開業後の焦点となるのは利用客数、特にマイカーからの転移がどれだけ進むかだ。こればかりは実際に開業しなければわからない話で、特に駅からの二次アクセスの欠如が指摘されている。
ジャカルタ州政府の手によって、MRTJ南北線の地下区間にしっかりと歩道が整備されたことは朗報で、駅を出ても歩く道がないというジョークも飛び出すほど切実であった歩道の問題は杞憂に終わった。しかし、都心側地下区間で、地上のスディルマン通りと並行して走るトランスジャカルタ1号線のバス停間隔は基本的に500m以上とMRTJ並みで、乗り継ぎの面で両者の相性が決していいとは言えない。
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