PayPayが「100億円あげる」に踏み込んだ真意 ソフトバンクがスマホ決済に探る鉱脈

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そこで今回のキャンペーンです。消費者に20%を与えて、加盟店をゼロ%にすれば市場は動く。この考え方から今回の消費者向けの「100億あげちゃう」キャンペーンが行われた一方で、加盟店に対しても決済手数料を「3年間無料」にすると宣言しました。楽天ペイは加盟店から3.24%ないしは3.74%の決済手数料を当たり前のように徴収しているのですが、楽天にとっては「悪夢ふたたび」といわんばかりに今回もソフトバンクグループはゼロ%で事業開始したのです。

さて3番目の疑問に答えましょう。このキャンペーンでこれから何が起きるのでしょうか。

おそらく今回のキャンペーンでの加入者増は限定的です。あっという間に100億円は使い果たして、キャンペーンは比較的短い期間で当初の予算上限に到達することになるでしょう。販売店の店頭で聞いたら「このペースだと今月いっぱいまでもたないんじゃないでしょうか」と、その反響の大きさを教えてくれました。

つまり早く気づいて動いた人はものすごく儲かる一方で、多くのユーザーは置いていかれることになりそうです。特に今回はめざといユーザーが「高額な商品を買ってメルカリで売りさばけば儲かる」と考えた様子で、大手家電量販店の店頭からは早くもiPadやニンテンドースイッチのような商品が姿を消し始めました。

そういったユーザーが5万円の上限還元額まで今回のキャンペーンを利用したとしたら、わずか20万人でキャンペーン資金は底をついてしまうことになります。そしてキャンペーンが早期に終了したと知ったところで、キャンペーンに乗り損ねた人たちから大きなブーイングの声が上がるかもしれません。

いちばん知られたスマホ決済サービスへ

しかし「それでいい」という意見があります。なにしろこのキャンペーン、ものすごくバズっているわけです。PayPayというそれまで誰も知らなかったスマホ決済サービスが、今回のキャンペーンの結果、いまや世の中でいちばん知られた決済サービスへと知名度を上げました。ちょうど「高輪ゲートウェイ駅」や「とろサーモン」が一夜にして日本中に知られるようになったのと同じ現象です。

筆者の予測ですが、この反響を受けてソフトバンクグループは第2弾の「もう100億円キャンペーン」を準備している可能性はありえます。その場合は用意周到に、上限額をたとえば1万円程度に抑えるなど、より多くの新規ユーザーが大盤振る舞いの恩恵を受けられるように設計するのではないでしょうか。

そのうえで「これだけ反響のあるスマホ決済なのだから、加盟店はぜひPayPayに対応するようにしてください」と、加盟店開拓もうまくいくようになるでしょう。

さて、最後にひとこと。今回の記事で、家電量販店でiPadやニンテンドースイッチを買い占めた皆さんに対して、「せめてメルカリではなくソフトバンクグループのヤフオクで売ってくださいね」と書こうかなと思ったのですが、それは知人に止められました。「そんなこと言っても、ヤフオクで売ったらそれをどこで仕入れたか、ソフトバンクグループにまるわかりだから無理ですよ」とのことです。いやいや、決済の世界は深いですね。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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