新宿駅南口の雑踏で見つけた「運命のお相手」 37歳うどん店経営者には「オーラ」が見えた

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急に熱っぽい口調になる孝男さん。彩香さんとの出会いがよほど衝撃的で印象深いものだったのだろう。会ってすぐに「次も会いたい」と感じ、3回目のデートでは交際を申し込んだ。

「ディズニーランドや水族館に行きました。楽しかったですねー。この人と結婚したいな、と思いました」

幸いなことに彩香さんも同じような気持ちを孝男さんに抱いてくれたようだ。翌年に2人は結婚し、半年後に彩香さんは妊娠した。

孝男さんには2人の兄がいて、実家の自営業は次男が継いでいて、長男は大手企業で会社員をしている。3人とも昨年に結婚して、長男から順に子どもができた。不思議な絆で結ばれた家系なのかもしれない。

直感で引かれ合った妻がいて、この記事が公開される頃には子どもが生まれている孝男さん。自分の料理には飽きているので、彩香さんがちょっとした手料理を作ってくれるだけでうれしい。彩香さんは妊娠をきっかけに勤めていた病院を辞め、現在は孝男さんの店を手伝いながら、時々派遣の看護師として働いている。

「派遣での時給は2000円を超えるそうです。うちの店の倍以上です……」

ただし、彩香さんにも店の様子を知ってもらうことで、2人で店の経営を考えられているというメリットがある。孝男さんにとっては心の大きな支えになっているし、彩香さんも共通の話題があって楽しいはずだ。

帰るべき温かな家庭があるからこそ

孝男さんは幸せだからこそ、仕事と家庭の両立に悩み続けている。

「店から家まではバイクで15分ぐらいですが、片付けをして帰ると夜12時ごろになってしまいます。朝は9時半ごろに店に出ます。疲れてギリギリまで寝てしまうので、家事は妻任せです。妻には申し訳ないとは思っていて、店が休みの日曜日は料理を作ってマッサージをしています」

だからといって、料理をしながら経営もしている店に手を抜けない。基本的には順調だが、1日でも客が少ない日があると不安になってしまうのが現実だ。自分の好きなように店を作れる喜びはあるものの、休みを取りにくい。

「今は私が出ずっぱりの状態です。(ほかの会社の)社員だった頃はシフト次第で連休も取れたのですが……。2店舗目の出店も考えていて、いずれ店長はほかの人に任せたいので、スタッフを育てているところです」

独身だったら時間と労力のすべてを店に費やすことができたのに、と思ってしまうこともある。しかし、孝男さんの力の源泉には、オーラを感じるほど好きな妻と生まれてくる子どもがしっかりと存在しているのではないだろうか。

懸命に働いて疲れても、客が少なくて不安になっても、帰るべき温かな家庭がある。そのありがたさは、これから孝男さんが歳を重ねるにつれてより強く感じる気がする。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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