ソニーのエンタメ、テレビ番組に大胆シフト 映画・音楽事業の内訳を初公開し事業方針を説明

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すでにこの4年間で800のポジションをなくしその分、人員削減をしたが、さらに15年度までに人件費を中心に2億5000万ドル(約250億円)削減するとしている。年23本程度だった年間の大型作品数も18本まで削減。2016年度に向けた年平均の成長率目標も横ばいから若干の減少を見込むなど先行きは厳しそうだ。

それとは対照的に、「かつてないほどの良い状況。無限の可能性がある」(リントンCEO)と評されたのが、テレビ番組制作と放送局を運営するメディアネットワークだ。このテレビ番組関連事業は2000年前後には米国でのテレビ番組制作からの撤退、放送局運営も数社にとどまるなど辛酸をなめたが、今では映画分野の4割近くを占めるまでに成長した。米国内での制作も復活し、海外での放送局運営も急拡大している。

新興国ではテレビ局を運営

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平井一夫社長は、エレキ、エンタメを一体運営することの重要性を強調している(撮影:尾形文繁)

テレビ番組制作は独立スタジオとして、全国ネットワークや各ケーブルテレビに提供しているうえ、14か国で18の制作会社を運営している。グローバル展開という点をより徹底しているのが、メディアネットワークだ。ソニーは早くから放送局の運営に強い関心を抱いていたが、米国で放送局を所有することが当時は規制により認められず、ターゲットを新興国へと合わせた。

そして1995年にインドとラテンアメリカで事業を開始した。アクション系ドラマを放送する「AXN」や、日本のアニメを流す「アニマックス」などが人気で、今では150カ国以上に展開し、9億5000万人の視聴者を有している。同事業の売上高の75%超を米国外で稼ぎ出し、うち4割弱を占めるのが当初進出したインドだ。インドなど事業の中心となる新興国では有料テレビ放送が主流で、今後も成長余地は大きいとされる。

莫大な投資を要するうえ当たり外れの大きい映画制作から、安定的な収益が見込まれるテレビ番組制作やメディアネットワークに軸足を移していく。そんな同社の戦略は明確だが、問題はそこで示された経営数値目標の低さだ。映画分野の2014年度見通しは売上高84億ドル、営業利益率7.5%。大規模な人員削減などコストカットが見込まれるにもかかわらず2012年度比で利益率は1%しか改善せず、これにはアナリストからも低すぎるのではないかと批判の声が上がっている。

事業戦略はともかく、サード・ポイントがこうした数値目標に納得するとは到底思えず、彼らの次の一手に注目が集まる。

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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