路面電車と一味違う「道路を走る列車」の記憶

特急やディーゼルカーが路上を堂々と快走

ここまでは、郊外電車など「鉄道」の車両が路面を走る路線を取り上げてきたが、最後に逆のパターンともいえる「路面電車が郊外に乗り入れて長距離を走る(走っていた)」路線を見てみたい。

西鉄北九州線

黒崎駅前に到着した西鉄北九州線の1000形電車。輸送力増強のため製造され、当時の路面電車としては大型の連接車だった(筆者撮影)

九州の大手私鉄である西鉄(西日本鉄道)もかつては路面電車網を抱えていた。その中でも北九州市内の広範囲に路線を広げていた「北九州線」は、最大で40kmを超える路線網を展開する郊外電車顔負けの路面電車だった。しかし、並行する鹿児島本線でJR発足以降、列車の増発が進んだことや、北九州市内の産業の低迷、当時の自動車優先の風潮などにより2000年をもって全線が廃止された。

一部区間で乗り入れを行っていた筑豊電鉄は現在も運行しているが、この路線は路面電車タイプの車両を使っているものの、法的には「鉄道」だ。

広島電鉄宮島線

宮島線の終点、宮島口に向けて路面の市内線を走る広島電鉄の電車(筆者撮影)

路面電車王国と呼ばれている広島の路面電車は、私鉄の広島電鉄(広電)が運営して市内を幅広くネットしている。この市内線とは別に広電には「鉄道線」がある。広電西広島と広電宮島口間を結ぶ16.1kmの宮島線だ。

かつてはこの線限定で郊外電車型の車両も運転されていたが、現在は市内線から直通する「Green Liner(グリーンライナー)」や「GREEN MOVER(グリーンムーバー)」などの低床式大型路面電車が走り、駅のホームも路面電車スタイルの低いものとなっている。この区間はJR山陽本線との競合区間であるにもかかわらず、市内の主要観光地から直通できることもあって観光客などの利用で好調である。

路面・郊外直通がもたらす鉄道活性化

ヨーロッパ、特にドイツの主要都市では路面電車がそのまま郊外区間や地下鉄区間に乗り入れ、主力公共交通として大活躍しているのはトラムを大切にするお国柄といえるだろう。一方でわが国での大形郊外電車の路面乗り入れは戦後高度成長期の名残りのようでもあり、今回取り上げたように、すでに多くの路線が姿を消してしまった。

だが、最近は福井のように郊外電車を新型の路面電車タイプの車両に置き換え、郊外と市内や他路線との直通を行い、鉄道の活性化を実現している例もある。福井鉄道が2014年に運行を開始したF10形車両は、そういった例の本場といえるドイツ・シュツットガルトを走っていた路面電車で、現役の頃ドイツでその姿を見た筆者には喜ばしい。今後とも「路面を電車が走る都市」の発展を温かく見守りたいと思っている。

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