路面電車と一味違う「道路を走る列車」の記憶 特急やディーゼルカーが路上を堂々と快走

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名鉄犬山線

名鉄にはいわゆる路面電車の区間だけでなく、本線上にも路面区間が存在していた。愛知県犬山市と岐阜県各務原市の木曽川にかかる犬山橋は鉄道と道路の併用で、線路は道路上に敷かれていた。

木曽川にかかる犬山橋を走る名鉄パノラマカー(筆者撮影)

この橋は1925(大正14)年に建設された三連トラス橋で、翌年の10月に鉄道の運行が開始された。この区間は鵜沼発の常滑、知多方面行き特急が頻繁に通過し、名鉄のシンボルだったパノラマカーは派手なミュージックホーンを鳴らしながら「そこのけそこのけパノラマカーが通る」とばかり闊歩していた。名鉄犬山線から国鉄(JR)高山本線直通のキハ8000系ディーゼルカー「北アルプス」も同様に木曽川を渡っていた。

だが、道路は並行して建設された「ツインブリッジ」へ2000年3月に移設され、元の橋は電車専用となり、道路併用橋の役割は終わった。

今も見られる「路上の大型電車」

京阪京津線

かつて三条―御陵間で路上を走っていた京阪京津線。80形電車はモダンなデザインだった(筆者撮影)
現在も京津線は浜大津付近で路面を走る(筆者撮影)

現在は京都市営地下鉄東西線と直通運転している京阪電鉄の京津線は、かつて京津三条―御陵(みささぎ)間の3.9kmが路面区間だったが、1997年の地下鉄開業の際に廃止になった。

路面区間のうち、蹴上(けあげ)―九条山間には国鉄(JR)で最も急勾配だった信越本線の横川―軽井沢間と同じ66.7‰の急勾配があり、電車はモーターをうならせながら走っていた。ここを走っていた80形電車はモダンな3枚窓のスタイルで、路面区間での乗降をスムーズにするためドアと連動して自動的に降りる乗降ステップを車側に組み込んでいた。

一方、浜大津付近は現在も路面区間があり、全国的にも珍しい4両編成の地下鉄直通電車が堂々と路上を走っていて、往年の姿をとどめている。

江ノ電

江ノ電は江ノ島―腰越間で路面を走る(筆者撮影)

「江ノ電」の呼び名で親しまれる江ノ島電鉄は路面電車ではなく鉄道だが、江ノ島―腰越間では道路上を走る。ここでは狭い商店街の真ん中に単線の線路があり、最大で4両編成の電車が堂々と走っている。この区間は国土交通省の特認を得た併用区間である。江ノ電といえば海沿いを走る湘南の電車、というイメージだが、この区間では下町の電車のような光景を見せている。

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