「プレイヤーズファースト」本当の意味は何か 誤用、乱用するスポーツ界の残念な大人たち

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11月20日は国連が定めた「世界子どもの日」だった。この日、東京、品川の「ユニセフ・ハウス」で、日本ユニセフ協会は「子どもの権利とスポーツの原則」を発表した。この原則は10の項目からなる。

1.子どもの権利の尊重と推進にコミットする
2.スポーツを通じた子どものバランスのとれた成長に配慮する
3.子どもをスポーツに関係したリスクから保護する
4.子どもの健康を守る
5.子どもの権利を守るためのガバナンス体制を整備する
6.子どもに関わるおとなの理解とエンゲージメント(対話)を推進する
7.スポーツ団体等への支援の意思決定において子どもの権利を組み込む
8.支援先のスポーツ団体等に対して働きかけを行う
9.関係者への働きかけと対話を行う
10.スポーツを通じた子どもの健全な成長をサポートする

(出典:ユニセフ『子どもの権利とスポーツの原則』

「プレイヤーズファースト」は、ユニセフが提唱する「子どもの権利とスポーツの原則」にぴったりと合致している。

この発表会では、スポーツ庁の鈴木大地長官も祝辞を述べた。また横浜DeNAの筒香嘉智、フランクフルトの長谷部誠などトップアスリートがビデオメッセージを寄せた。

ビデオメッセージをよせた筒香嘉智(筆者撮影)

シンポジウムでは、当コラムでもたびたび紹介している堺ビッグボーイズの瀬野竜之介代表が、かつての「勝利至上主義」を改めて、子ども本位の指導へと変貌した経緯について説明した。

今、東京は2020年の東京オリンピックに向けて、まちの姿が変貌しつつあるが、同時にスポーツのあり方、アスリートをめぐるスポーツ環境の変革も進んでいる。「子どもの権利とスポーツの原則」は、まさにその基幹となる概念なのだ。

「ご時世だから」ではない

「今は昔みたいに子どもを殴ったり、怒鳴ったりできなくなった。それは理解しているから今はやらない。でも、今の子は甘やかされてひ弱になったね」

高校の部活を取材すると、ベテランのスポーツ指導者からたびたびこういう言葉を耳にする。昔ふうの指導ができなくなったことが、いかにも残念そうだ。

しかし、「ご時世だから仕方がない」というレベルの話ではない。これからのスポーツ指導者たちは「プレイヤーズファースト」を心の底から理解し、目先の勝利を追わず、選手の「未来」のためには、どうするのがよいのか、一生懸命考えて指導をしなければならない。

世界のスポーツ界の趨勢を考えても、それができない指導者は「退場」するしかないのだ。

(文中一部敬称略)

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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