西武新特急、JR九州デザイナーはどう評した 銀色の円筒、豪華列車「ななつ星」とは対照的
妹島氏は考えた。「小さいお子さんは格好よくシャープな車両が好き。しかし、西武の特急列車には子供からお年寄りまで幅広い年代、さまざまな目的を持つ人が乗る。誰もが新しく感じる車両とはどのようなものだろう」。そして、たどり着いた結論は、格好よさよりも柔らかさを出す。角張らず丸みを帯びる。車両が主張しすぎず、周囲の風景に溶け込み、風景の中に置かれることで見え方が変わってくる――というものだった。
このコンセプトには製造を請け負った日立側も最初は驚いたが、「チャレンジングだが、実現できる」と判断した。地下鉄に乗り入れることも想定して前方の窓が扉として開くなど、実務上の要求にもきちんと応える設計になっている。
銀色に輝く車体はアルミの地肌ではなく、塗装を施すことで周囲の風景に溶け込むデザインを目指した。「塗装しない状態も試してみたが、ピカピカにすると、かえって黒っぽく見えることもある」と妹島氏は話す。
そして客室の大きな窓は、居間の窓をイメージしたという。「寸法上も大きいが、それだけでなく、試行錯誤して見た目よりも大きいと感じられるようにプロポーションを決めた」という。一方で、走る列車の窓があまりにも大きいと、かえって不安に感じる乗客もいるかもしれない。そのため、座席は体が包み込まれるようなデザインにして、安心感を得られるような工夫を施した。
客室内は窓が大きい分だけ装飾がほとんどなくシンプルだ。黄色いシートは妹島氏が通学時に利用していた西武新宿線の車両をイメージしたという。「今回は特急車両のデザインですが、私にとって西武といえば黄色なのです」。落ち着きのある黄色、華やかな黄色、さまざまな黄色から選んだのが今回の黄色だった。
水戸岡鋭治氏は「絶賛」
外観も内装も非常にシンプルなラビューのデザイン。その対極にあるのが、豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」に代表される、JR九州(九州旅客鉄道)の観光列車群といってよい。「或る列車」「海幸山幸」「かわせみやませみ」「いさぶろう・しんぺい」など、その車両の多くは木材をふんだんに使ったクラシックな内装が特徴で、乗客の目をとらえて離さない。JR九州の観光列車に乗るために全国から観光客がやってくる。これらの列車をデザインした水戸岡鋭治氏は、今や鉄道デザイナーとして真っ先に名前が挙がる存在となった。
では、水戸岡氏はラビューのデザインをどう考えているのだろうか。
「すばらしい。すごいと思います」――。
11月5日の夜、都内で開かれた講演会で、「ラビューのデザインをどう思うか」という会場からの質問に対して、水戸岡氏はこう答えた。「妹島さんはそうとう頑張ったと思います。普通はこういう提案をするとアウトです。先頭の曲面は設計上許されるギリギリなのでしょう」と水戸岡氏は妹島さんの仕事を高く評価した。
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