西武新特急、JR九州デザイナーはどう評した 銀色の円筒、豪華列車「ななつ星」とは対照的

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JR九州で水戸岡氏が手掛けた観光列車には中古車両を改装したものが多い。しかし、車内に足を踏み入れれば、内装のすばらしさに圧倒される。これが古い車両だとは誰も思わないだろう。

JR九州の「或る列車」。クラシカルで豪華な内装が特徴だ(撮影:今井康一)

中古車両を見事な観光列車に仕立てた実績が買われ、全国各地の鉄道会社が、水戸岡氏に観光列車のデザインを依頼している。だが、その注文のほとんどがクラシックなデザイン。その理由は、唐池氏の言うように「客が望むから」というものもあるが、中にはコストが理由となるケースもある。

「モダンなデザインの車両はある程度コストをかけないと造れないが、クラシックなデザインはそれほどコストをかけずに造ることができる」と水戸岡氏は言う。クラシックなデザインの車両を数多く生み出し、その経験やノウハウが生かされているという側面もあるだろう。

さらに、水戸岡氏の周囲には、これらの列車の内装を数多く手掛けてきた「チーム水戸岡」とも言うべき職人集団がいる。こうした人たちが納期内に要求どおりの装飾をきちんと作ることが信頼感を醸成する。水戸岡デザインの列車を運行する鉄道会社の元関係者は、「鉄道デザインの経験がない人に発注するような冒険はできなかった」と明かす。

船のデザインも「前例破り」

現在、水戸岡氏は船舶のデザインにも乗り出している。小田急電鉄が芦ノ湖で運航する新型「海賊船」や、福岡ー釜山間を結ぶJR九州の「クイーンビートル」などだ。とりわけ、クイーンビートルの真っ赤な外観は、かつての真っ赤な485系のようなインパクトがある。

現在、水戸岡氏がデザインしているJR九州の「クイーンビートル」。福岡―釜山航路に2020年7月に投入される予定だ(写真:JR九州)

普通、客船と言えば白を基調とすることが多いが、あえて赤くするのは、見る者、乗る者を感動させようということにほかならない。水戸岡デザインの真骨頂とは、こうした「前例破り」にあるように思われる。

今回の妹島氏のラビューもまさしく前例破りのデザインだった。船に続く水戸岡氏の仕事がまた鉄道だとしたら、それは誰も見たことがないようなデザインとなるだろうか。ただ、それを実現させるためには、その挑戦を許容する鉄道会社と、デザインを形にするメーカーの協力が欠かせない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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