「ロボット店員」が人間に心地よい意外な理由 資源競争は食料→水→土へと移行していく
書き手は絶滅危惧種になるが生き残る
辛酸なめ子(以下、辛酸):最近、「AIによってさまざまな仕事が奪われていく」という話をよく聞きます。この急激な時代の変化に自分はついていけるのか、時に「怖い」とすら感じることもあります。
坂口孝則(以下、坂口):いまや某社のウェブに載っている株価記事の8割はロボットが書いている、とも言われます。だからといって書き手という仕事がなくなるか、というとそんなことはないのです。ロボットが得意なのはスポーツと株の記事。株なら「何日ぶりに反発」とか、野球なら「この選手はツーストライクのときに弱い」などデータとフォーマットがあるものならすぐに書ける。
しかし政治や経済の解説やコラムは、書けないと言われています。辛酸さんのように「漫画×スピリチュアル」など意外なものを組み合わせて、表現していくエッセイストや評論家の仕事は、絶滅危惧種になりながらも最後まで生き残っていくのだと思っています。
辛酸:それならいいのですが。でも自分の思考回路をアップロードしてAIに勝手に仕事を進めてもらえれば楽な気もしますね。資料集めくらいはやってくれる時代が来そうです。
坂口:AIで最も有名なものにヒト型ロボットがありますよね。これはある百貨店が店頭での接客にロボットを導入した話なのですが、当初は「ロボットなら長時間労働でも疲弊しないし、製品知識も枯れない」というのが狙いだった。
しかし実際に導入した結果、まったく違う利点が見つかったというのです。ロボットの導入はサービスを供給する店舗側より受け手であるお客さんにとってのメリットのほうが大きかったらしいのです。たとえば女性なら自分の体型に合う下着のサイズの話もロボットには気軽にできる。
辛酸:なるほど。ロボットになら店員さんに言いづらい話も気軽に言えますよね。でも以前、ロボットに画像判定で50代の女性と言われたことがあって、その時はどこに怒りをぶつけていいかわからなかったですよ。
坂口:確かに(苦笑)。ただ、ロボットなら話しかけられても、途中で説明を打ち切ることもできます。「感情労働は人間にしかできない仕事だ」と言われていますが、むしろ受け手にとってはロボットのほうが都合はいいのです。