「ロボット店員」が人間に心地よい意外な理由 資源競争は食料→水→土へと移行していく
辛酸:自動運転車が走り出すと、運転手がいなくても免許がなくても車に乗れるようになるのでしょうか。
坂口:自動運転もいくつかのレベルがあります。経済産業省が2020年ごろまでに目指すのは部分運転の自動化です。タクシーの自動運転を導入すると、レイプや麻薬の温床となるという話があります。
辛酸:密室ゆえにそういう問題が起こるのですね。
坂口:そのような問題を避けるには、ドライブレコーダーで録画し続けるなど監視システムがないと完全な自動運転化は難しいかもしれません。そういえば、アメリカでは自動車の部品メーカーの中で内装メーカーの注目が高まって、株価が上がるという話があります。自動運転によって「いかに車の内側を快適な空間にするか」が重視されてきています。
運転手はただの搭乗者になる
辛酸:マッサージ機能つきの車も増えていますね。ボルボやベンツなど試乗したらレベルが高かったです。
坂口:ドイツのボッシュという自動車部品メーカーの発表した自動運転プロジェクトの構想図では、車内のシートが内側を向いていました。運転手が前方を眺めずに内側を向いていて同乗者と会話するわけです。これまで運転手だった人は、単なる搭乗者になるのです。
辛酸:とはいえ乗っている側としては、運転するときには前を向いていてほしいですけど……(苦笑)。
坂口:また人間が運転すること自体の快楽を忘れることができるのかというと、それはまた別の話です。
辛酸:加速の知覚こそ快感で、直感的な性の実感にも結び付く……という福岡伸一さんの『できそこないの男たち』(光文社)の話も出てきましたね。「アクセル=射精」という例えも印象的でした。
坂口:1960年代のアメリカのCMを見ると、車は性的なものとして描写されているのですよ。女性のメタファー(比喩)となっていて、それを乗りこなすことが男の征服欲を満たすともうたわれている。
辛酸:男性器みたいなシフトレバーを見たことがあります。
坂口:ジェットコースターも車も、どういうわけか人間は自分の生きる速度を超える感覚に本能的な快楽を覚えるらしいのです。また「考えごとをするときには、速い乗り物に乗ったほうがいい」と唱える心理学者もいます。通常、われわれが生きる速度を超えたところに新しい発想が生まれるのかもしれませんね。
辛酸:新幹線に乗っていると仕事がはかどる気がします。
坂口:J・K・ローリングも電車に乗っているときにハリー・ポッターのアイデアを思いついたことは有名な話ですね。
ちなみに東南アジアでは、高級車が売れているのですよ。理由はウーバーやグラブでの副収入です。高級車のほうが、料金が高くなるため利幅がいい。金融商品としての先行投資です。
自動運転によって自動車は「動く金融商品」となり、自動運転の進化によって私たちの資産のあり方も変わってくるはずです。
(構成:アケミン)
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