新興国リスクが意外に小さい「6つの理由」 危機が起きる可能性は4%程度かもしれない
IMF(国際通貨基金)の分析では、95%の確率で、中国は間接金融の拡大が経済成長に合理的となるステージを数年前に終えたと見られている。その一方で、直接金融、特に、社債市場のインフラ整備が遅れていることが、リスク要因として指摘されている。今後、どういうスピードで、中国の資本市場のインフラ整備が進むか、注視が必要だ。
ただし、安心材料もある。中国の政府債務はGDP比で50%にも達していない。そのため、ダウンサイド・リスクが発現した際は財政出動で経済の下支えを行い、支出の調達源を民間債務から政府債務にうまく移行できれば、ソフトランディングが実現されるかもしれない。
「楽観シナリオ」も、決して油断はできない
そもそも、中国のハードランディング・シナリオへの懸念も注視されているのは、中国経済が世界経済に与える影響も大きいことによる。中国がハードランディングになる確率自体は、一般的には日本政府の財政が破綻する確率より少し高いくらいと言われており、現時点ではそれほど高くはない。もちろん、日本経済が過去に不良債権処理などで債務を民間から政府に移行した際の紆余曲折を考えれば、油断は禁物だろう。1990年代初頭の不動産バブルの崩壊、1997、1998年の金融危機は、多くの人にトラウマを残したからだ。
話を新興国の債務危機に戻すと、中国経済の規模の大きさから、ハードランディングが起きた際の新興国への伝播リスクが過剰に意識されやすい。しかし、新興国の経済成長への貢献度は、いまだ、先進国の合計のほうが中国1国よりも大きく、また③のとおり、中国経済の減速が原因で資源価格が下落しても、新興国の債務危機にまで到達する可能性は高いとは言えない。
⑥ 新興国を個別に見たときに脆弱な国はどこか
新興国一般については以上のとおり、債務危機を意識しすぎる必要性は大きくない。とはいえ、各国を個別に見ると、もちろん脆弱な国も存在する。
パキスタン、モンゴル、スリランカ、ガーナ、ザンビア、ニカラグア、ウクライナなどがそれに当たる。たとえばパキスタン政府は、すでに今年10月にIMFに救済を求めることをほのめかしている。
これらの国の経済規模は、アルゼンチン、トルコ、インドネシアに比べると非常に小さく、政府の公式・非公式な資本規制が発動されるリスクも高いため、いわゆる投機筋主導の通貨下落に見舞われるよりも、ファンダメンタルズ主導で、通貨が下落して政府の対外債務の支払いに支障をきたすパターンになる可能性が、他の新興国よりも高い。
ただし、これらの新興国は経済規模が小さい。債務危機が他の新興国に伝播するような事態にはならないのではないだろうか。以上から、筆者は「新興国の債務危機が起きるリスクは4%」と考える(4%は有事も含んだジャンク債の過去のデフォルト率の平均値)。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら