新興国リスクが意外に小さい「6つの理由」 危機が起きる可能性は4%程度かもしれない
③ 原油価格が一定以上下落したら?
新興国は今でも自国から産出される資源や、第一次産業に頼っている国が多い。産油国の経済は、特に石油輸出への依存が強いのは周知のとおりだ。2014年にアメリカがシェールガスの輸出を開始したのに対して、OPEC(石油輸出国機構)が対抗策として減産を行わないとしたため、世界的な原油の指標であるWTIの先物価格が1バレル=40ドルを割る水準まで下落したとき、 ナイジェリア、ロシアなど、石油輸出に依存する国の通貨の暴落が起こった。
しかし、その後、時間が経つにつれて資源国各国の生産性向上によって、低い資源価格が資源国の経済成長を阻害する程度のことは減殺したことが観測されている。今後再び、何らかの要因で資源価格が下落しても、2014年程度のものにとどまるのであれば、新興国各国が債務危機にまで陥る可能性は低いといえる。
④ 先進国発の金融危機の影響は?
この点は、2008年のリーマンショック以降のデータをもとに分析が進んでいる。リーマンショック後、相当数の新興国政府が財政出動のために、外国からの借り入れ増の必要性が生じる一方で、輸出の減少によって稼ぐ力(債務を返済する能力)が減少するという二重の打撃を被った。しかし、3年程度で債務残高も通常の水準へと回帰し、結局、比較的ファンダメンタルズの弱い国も含めて、リーマンショックが原因で債務危機に陥った国は現れなかった。
高リスクによる高成長を狙う中国は楽観視しづらい
また、2018年10月現在、市場のボラティリティ(変動率)が通常より上がっているとはいえ、2007年8月以降のサブプライム危機が発現したときのような(悪い)市場環境とまでは言えない。今、リーマンショックのようなことが起きることで、新興国で債務危機が起こるというのは、まだ市場への見方として負のバイアス(偏った見方)がかかっていると言わざるをえない。
⑤ 中国経済は民間の債務問題で危機に陥らないのか?
中国についてはほかとは様相が異なる。一言で大丈夫とは言いづらいものがあるからだ。読者も周知のとおり、現在の中国のように、民間債務がGDPの200%を超えている状態を、どの国も経験していないからだ。中国はリスクをとって高成長する道を選んだのであり、リスクがあるものについて、安心・安全だとはいえない。
中国の民間債務問題がなければ、この記事のタイトルを「新興国の債務危機が起きるリスクは2%」にしただろう(2%はジャンク債の平時のデフォルト率)。
この点についても、専門家の分析は年々進んでいる。中国の民間債務問題は、その規模もさることながら、間接金融から直接金融へのシフトが遅れていることも近年指摘されている。
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