新興国リスクが意外に小さい「6つの理由」 危機が起きる可能性は4%程度かもしれない
① アメリカの利上げによる資本流出と通貨下落
「アメリカの利上げによって新興国から資本が流出する 」
このシナリオが直近心配されているが、実際には2018年の新興国からの資本流出は、ここ10年でみてもたいしたことはない。
ここ10年で新興国からもっとも資本が流出した四半期は、2013年にFRB(米連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ議長が突然テーパリング(量的緩和の縮小)について言及して市場との対話を誤った、いわゆるバーナンキ・ショック直後だ。今年よりもそのときのほうが新興国から資本は流出しており、現時点の新興国の資本流出入は通常時のそれと特に変わらない。
通貨の下落に関しては、インドネシアのように対外債務に占める外貨建て債務比率が高い国の市場がやや狙い撃ちされて、実質実効為替レートで見ると下落傾向にある。しかし、1997年にアジア危機が起きたときとは、ファンダメンタルズの頑健さが異なっており、現時点では、トルコやアルゼンチンのような通貨の「暴落」にまで発展する兆候は見られていない。
アメリカと政治的対立をしている国は危ない
アルゼンチンのように、現在に至るまで何度もデフォルト(債務不履行)を繰り返している国を除くと、2014年のロシア(クリミア侵攻)や、2018年のトルコ(アメリカ人牧師の引き渡し拒否)など、近年の一定以上の経済規模を誇る国の通貨の暴落には、アメリカとの政治的な対立による経済制裁が影響していることも見逃せない。それでいうと、インドネシアはアメリカと政治的に対立関係にないので、その点も心配はない。
② 米中貿易戦争が与える新興国へのダメージ
2018年に入って米中貿易戦争が激化しており、これが新興国に与える影響を心配する向きもあるが、すでにIMFがその影響をシミュレーションしている。「World Economic Outlook 2018」では、アメリカが中国からの輸入品に関税をかけ、それに対する中国の報復、さらに貿易戦争の範囲が自動車、トラックや部品類にまで及んだ場合について、市場のセンチメントも考慮して分析を行っている。それによると、新興国のGDPは2年程度、1%強押し下げられるという。
GDPが1%押し下げられる程度のインパクトで、新興国が債務危機にまで達するとは考えづらい。
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