また、JR九州でも今年3月のダイヤ改正により福岡都市圏以外で運行本数の削減が実施され、地元との軋轢を生んだ。その背景にはそれぞれの地域で高速道路の整備が進み、各鉄道会社の収益の柱の1つであった都市間輸送が高速バスなどにシフトしたことが要因の1つとして挙げられる。高速道路の利便性が鉄道の退潮につながり、通院する高齢者や通学する高校生などの足を奪おうとしているのである。
鉄道網との役割分担の再考も
山陰道の整備も、同様の問題を引き起こすことが想像される。山陰道が整備され、今はまだ走っていないが益田~浜田~松江を結ぶ高速バスが都市間輸送の主役を担えば、現在山陰線を走っている特急の必要性も薄れるだろう。
また、現在でもたとえば浜田市では高速道路により広島市と直結したため、人やモノの行き来が盛んになっている。浜田と広島を2時間余りで結ぶ高速バスは1日に16往復もある。こうした整備は、広島都市圏からの観光客の誘客に効果を発揮する一方で、レジャーや消費が大都市の広島市に流れる「ストロー現象」を引き起こしており、高速道路の整備は山陰の都市間を結びつける以上に、開通した地区が山陽側に吸い込まれるこうした現象をさらにもたらす可能性もある。
交通網の整備は道路と鉄道を別々に切り離して利点だけに目を向けるのでなく、お互いにどのように作用しているのかを見極め、デメリットが予想される場合は事前に対策もしておかなければ「高速道路の整備は続けてきたが、地域に必ずしも利便性や富をもたらさなかった」ということになりかねない。
もちろん災害時の代替道路としての役割も重要だ。今年のような災害は例外ではなく、今後毎年のように起こる可能性も高い。建設費用の負担ともたらされる利便性とデメリット。それらを天秤にかけ最適な判断をすることが求められている。
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