山陰道の整備の必要性は、災害時の代替機能だけではない。全国で高速道路の整備が進んだ結果、ほとんどの都道府県で域内の主要都市が高速道で結ばれるようになったが、和歌山県の紀伊半島の先端部分と高知県の室戸方面を除けば、整備が最も遅れているのが島根県であるといっていいだろう。
島根県は東西に長く、県東部の安来市から観光地として知られる県西端の津和野町まで210km余りもある。JR山陰線・山口線の特急列車でも3時間ほどかかる。この山陰線は「本線」とはいえ、ディーゼルカーが対向列車を退避しながら進む非電化の単線で、ローカル線の色彩が強い。
山陰道の整備は島根県の「悲願」
人口減少時代を迎え、JRが山陰線の輸送力増強や高速化を進めるとは考えにくく、県内の移動を円滑にするためにも山陰道の整備は島根県にとっては悲願であることは容易に想像がつく。
地元の要望は強い。今年の9月29日には、島根県浜田市で「山陰自動車道建設促進島根県民総決起大会’18」が開かれ、500人余りの参加者が集った。楫野弘和大田市長、長岡秀人出雲市長も出席し、未事業化区間の早期事業化や全線開通を国に求める大会決議案を採択している。
実際のところ、現在の細切れ開通では、高速道路の速達性の機能もあまり発揮されておらず、私自身もすでに半分程度整備が進んだ以上、今後も整備を加速することが重要であるとの認識を持っている。
しかし、それと併せて考えておかなければならないことがある。JRの北海道、四国、九州のいわゆる「三島会社」の路線網の維持に黄信号が灯りつつあることである。JR北海道は、今年胆振東部地震や台風などの災害の影響もあって、膨大な赤字にあえいでいる。昨年留萌線留萌~増毛間が廃止されたのに加え、来年春にも石勝線夕張支線が廃止される。日高線鵡川以東や根室線滝川~新得間も風前の灯だ。
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