安倍首相、日ロ交渉に踏み込むも障害だらけ 平和条約締結合意で衆参同日選を狙う?
首相とプーチン氏は、今月30日と12月1日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも会談する予定だ。さらに首相は「年明けに訪ロして大統領と会談する」ことも明らかにした。官邸筋によると、首相は来年1月下旬のスイスのダボス会議(世界経済フォーラム)出席に合わせて、その前後に訪ロする計画だという。
首相としてはこれらの会談で“ひざ詰め談判”により大統領との間合いを詰めていき、来年6月28、29両日に大阪で開催されるG20に合わせて日ロ首脳会談を行って、北方領土問題も含めた平和条約締結への「基本合意」にこぎ着けたい考えとみられている。
来年6月の基本合意が「タイムリミット」
首相が力説した「われわれの代での平和条約締結」が実現すれば、史上最長を視野に入れる安倍政権の「最大のレガシーになる」(官邸筋)ことは間違いない。首相周辺では「ノーベル平和賞もの」との声も出る。ただ、9月の自民党総裁3選で、首相の任期は2021年9月末までとなり、残りは2年10カ月余で「そんなに時間があるわけでもない」(側近)。
日ロ平和条約交渉と並ぶ歴史的外交課題だった日中国交回復交渉は、1972年の田中角栄政権での国交正常化合意から、福田赳夫政権での日中平和友好条約調印までに、6年もかかっている。今回も「平和条約締結で大枠合意しても、条文の詰めや国会での批准で最低でも1年以上かかる」(外務省筋)とされるだけに、首相が視野に入れる来年6月の基本合意が「任期中の平和条約締結のタイムリミット」(同)との見方も広がる。
一方、来年の政治日程をみると、首相にとっての政局運営の最大の関門は、来年7月とされる参院選だ。首相にとって、「日ロ」と並ぶ「政権最大のレガシー」と位置付けられる憲法改正の成否も絡む「最大のターニングポイント」(自民首脳)だが、現状では「苦戦必至」(自民選対)とみられている。選挙での自民退潮で、現在の参院での「改憲勢力3分の2」を大きく割り込めば、「任期中の改憲実現」にも赤信号が灯ることになる。
そこで浮上してくるのが、「日ロ交渉合意で国民に信を問う」(自民幹部)という日ロ解散説だ。年明けに召集される通常国会の会期末に首相が衆院解散を断行して、「衆参同日選で勝負を賭ける」(同)というものだ。立憲民主党など主要野党は、参院選での「統一候補」などを軸とする選挙共闘の協議を進めているが、「政権選択が問われる衆院選が重なると、政治理念がバラバラなだけに、全面的な選挙共闘は不可能」(立憲民主幹部)となるのは間違いない。過去2回の同日選でも自民党が衆参で圧勝しており、「首相にとっても魅力的な選択肢」(自民長老)となるからだ。
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