4代目ジムニーが女子にも大人気を呼ぶ理由 デザイン、走り、構造のすべてが潔い

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藤島:それまでのSUVはアメリカ的な思考からみると車体が大きいこと、車高が高いことに価値がありました。しかし、スズキは「ジムニーでしか行けない道がある」と言っています。そういう意味では、ジムニーのあの小さいサイズはえらい。

――なぜジムニーはこれほど長くブランドを続けられるのでしょうか。

森口:一般のユーザーは、あちこちの車に目移りします。でも林業に従事されている方なんかは、「仕事はジムニーでなければダメ」という人もいますよね。月間の販売台数ではそんなに多くはない。スズキがその客層の面倒を見る格好でつくり続けてきたことがロングセラーにつながったのではと思います。

人気の理由は「本物」を手に入れた満足感

藤島:面白いのは、普段はスポーツカーを扱っている人や、オフロードを走らない人が目を輝かせて「ジムニーが欲しい」と言うわけですよ。そのエネルギーがちょっと信じられないですよね。

西村直人(にしむら なおと)/交通コメンテーター。1972年1月、東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。近著に『2020年、人工知能は車を運転するのか』がある。(撮影:梅谷秀司)

西村:なぜこれだけ長く続いているかというと、唯一無二だったから。開発をしている方々に聞くとすごく愚直です。たとえばトランスミッションの開発にしても、ユーザーからシフトフィーリング(変速時の操作性)がうんぬんという話を聞いたら、スポーツカーのカプチーノで好評だったパーツのフロントエンジンリアドライブをジムニーにあてがって、ジムニーのスタイルを変えていない。部分的にウイークポイントを改良する。

芯をぶらすことなくつくり続けてきていることが、支持されているいちばん大きな理由ではないでしょう。皆が言うような本物感ではなく本物なんです。自分がその車に合わせていくという感じ。ある部分は目をつぶるけれども、本物を手に入れた所有欲、満足感が今まで続いていることが人気の秘密でしょう。

藤島:そうですね。やっぱり1台でいろいろな要素を叶えようとすると、どうしても曖昧なコンセプトになってしまう。

西村:確かに。

藤島:乗りやすさを追求すればフロアはできるだけ低いほうがいい。でも地上高を確保するという理由からジムニーは高い。乗ってみて、ハンドルが軽くてスムーズかというと一癖はある。オフロード車に乗っている実感はあって、シートに座れば目線の位置はすごく高い。それが日常とは違う非日常の感覚を手にしている喜びみたいなワクワク感、冒険心をくすぐる感じがありますし。この車を持っている自分がなんとなく誇らしく思えるところがあるのでは。

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