大井町線に「指定席車」を導入する東急の思惑 田園都市線の混雑対策のほか「品川」も意識
同社の思惑は、田園都市線から大井町線に利用者のシフトを促したいというだけではない。大井町線の終点である大井町駅からは、再開発の進む品川へJR京浜東北線で1駅。着席通勤可能な列車の運転によって「品川周辺に通勤する人にも、多摩田園都市にぜひ住んでもらえるよう目を向けてもらいたい」と担当者は語る。
通勤客の反応はどうだろうか。田園都市線利用者に尋ねてみると、その反応はさまざまだ。
豊洲まで、同線と地下鉄半蔵門線・有楽町線経由で通勤しているという40代の会社員男性は「帰りに座れるなら(りんかい線利用で)大井町線経由もありかも」。長津田から目黒まで通勤する30代男性も「(目黒線と接続する)大岡山から座れるなら大井町線経由もありだと思う」。
一方で「田園都市線が混むといっても夜は座れることもあるし、乗っても30分程度。小田急のロマンスカーみたいな車両だったらお金払ってもいいけど、これ(Qシート)はどうかねえ……」(50代男性)、「別料金を払ってまで座らなくてもいいかな」(60代男性)と懐疑的な意見も聞かれた。
「田都で座って通勤」は可能か
東急は10月末、田園都市線たまプラーザ駅周辺で、郊外住宅地の維持・発展を目的としてさまざまな移動手段を組み合わせ、交通利便性を高める「郊外型MaaS」の実証実験を来年1月から行うと発表した。その目玉は、朝のラッシュ時間帯にゆったり座って都心へ通勤できる「ハイグレード通勤バス」だ。
同実証実験の担当者は「大井町線座席指定車との連携は考えていない」というが、田園都市線利用者の「座りたい」というニーズに対応しようという点は共通している。
都心に近く環境に恵まれた住宅地としてブランドを維持し続けてきた東急多摩田園都市。だが、同地域の移動を担う田園都市線は「混雑が激しい」というイメージが根強く定着しているのも事実だ。
首都圏の鉄道各線が混雑緩和や着席サービスの導入などで快適通勤をPRする中、田園都市線も従来の「沿線の魅力」だけではなく「交通機関としての快適性」を高める必要性に迫られてきている。
大井町線から田園都市線沿線への帰宅の足となる「Qシート」。東急初の「座れる通勤列車」が通勤客にどう評価されるか。運行開始は約1カ月後だ。
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