ソフマップ「脱オタク依存」へ打ち出す新機軸 「グラドルの聖地」を返上、中古市場に再挑戦

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ところが渡辺社長は、その中古事業をソフマップの強みととらえた。「パソコン専門店としての専門性とノウハウがあるわけだから、買い取り商品を選別して保守サービスを徹底すれば、他社とは容易に競合しない」(渡辺社長)。

実際、パソコンは機種やメーカーが多様なうえ、設定に手間がかかる。「ほかの家電に比べてカスタマーサービスが必要で、店員にも専門性が必要」(大手家電量販店社員)。さらに中古となると、保存されているデジタルデータやコンピュータウイルスなど情報セキュリティへの不安も重なる。中古のパソコンやタブレット端末の売買に抵抗を感じる人も多い。

ソフマップには千葉県浦安市にお客から買い取ったパソコンや携帯電話などを商品化するセンターがある。データ消去やウイルス対策、設定サポートなど、長年培ってきたノウハウを活用すれば、安い価格で安全な中古商品を提供できる。

中古デジタル機器以外でも新たな取り組み

11月12日には中古専門サイト「リコレ!」を刷新。同サイトではソフマップ全店の在庫を見ることができるようにした。このサイトに来れば、ソフマップが取り扱う中古品を一覧できる仕組みだ。特徴の1つが、一定期間「返品OK」としたこと。「返品OKであれば安心して利用してもらえる。中古品は返品があっても再販できるのがいいところ。中古品はネット販売に適している」(渡辺社長)。

今後は取り扱いをパソコンやゲームソフトだけではなく、専門業者と提携しながらほかのアイテムに広げる。すでにアパレルでは、古着衣料などを手掛けるベクトルと業務提携した。ほかにはブランド品、ベビーグッズ、酒、アウトドアなどに広げる予定だ。7月からは総合買い取りアプリ「ラクウル」の配信も開始、3年以内に100万ダウンロードを目指す。

ネットを軸に中古事業を展開する中で、今後店舗は「お客様に安心感を与えるための拠点であり、広告塔」(同)と位置づける。

新しい小型店「ソフマップ リコレクション」。黒と白を基調と外観で、これまでのソフマップの店舗とは一線を画している(記者撮影)

JR池袋駅近くに3月開業した中古アップル製品の専門店「ソフマップ リコレクション」。売り場面積はわずか50平方メートル、標準的なコンビニエンスストアに比べ半分以下だ。販売拠点と考えれば不十分だが、お客への"広告塔”"修理受け付け拠点”と考えれば十分な規模になる。今後はこうした小型店舗を主要駅の駅前に数多く配置したいという。

中古市場にはフリマアプリの「メルカリ」をはじめ、競争相手も多い。その中でソフマップがどこまで存在感を示すことができるか。「オタク依存」の脱却に向けた取り組みは始まったばかりだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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