過疎地の足「デマンド交通」は万能ではない 利用者少ない地域でタクシーを使う事例も
米原市にヒアリングしたところ、統一後はかつての「まいちゃん号」「カモン号」時代の利用者数合計の約2倍に増えているという。運行エリアが広がり、今までデマンド型交通が運行していなかった地域(公共交通空白地域)の利用者がいるためというが、登録制を廃止したことで利便性が向上したことも利用者増加につながっているであろう。
収益率については、運行開始からまだ1年経過していないため、統計が出ていない。それゆえ明確なことはわからないが、運賃が値上がりしたこともあり、収益率は改善されているのではないかとのことであった。
「バスに乗り継ぐ手段」としての導入も
デマンド型交通には欠点もあるが、ドアtoドアの輸送が可能になるなど、長所もある。さらに言えば、デマンド型でなければ対応できない地域もある。その事例として、高知県いの町の事例を紹介したい。
同町は2004年に3町村の合併によって誕生した。町内には公共交通空白地域が多く、かつ高齢化率の高い地域があり、これらの解消が課題であった。だが、こういった地域は山間部にあり、コミュニティバス運行には採算性だけでなく、地形が急峻で満足にバスが通行できる幅員の道路がないこと、高齢者がバス停へアクセスすること自体が困難であるなどの問題がある。
そうするとデマンド型交通で対応せざるをえないが、導入の仕方によっては地元の路線バス事業者やタクシー事業者から反発が生じることにもなる。そこで同町は、デマンド型交通を自宅付近からバスに乗り継ぐための交通手段として採用した。
これであれば路線バス事業者の利用者を奪うことにはならない。また、路線バスと接続する形で新規にデマンド型交通を設定する場合は、国から補助金が支給される。町は「地域公共交通確保維持改善事業」という制度を上手に生かしたといえる。
従来は公共交通が無かった地域に、ドアtoドアの交通機関が誕生したことで高齢者の外出を促進する結果となったとともに、結果的には路線バスの維持・活性化にも貢献することになった。登録証などが不要のシステムであることも、好評の要因である。いの町のデマンド型交通は「地域公共交通確保維持改善事業」の利点を活用して導入し、利用者から好評を得ている事例であろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら