過疎地の足「デマンド交通」は万能ではない 利用者少ない地域でタクシーを使う事例も
昨今、少子化や過疎化の進展などにより、路線バスやコミュニティバスの利用者が減少し、これらを維持することが難しくなりつつある。そこで自治体によっては、より運行コストが低い、セダン型のタクシーなどを使用した「デマンド型」の公共交通へ置き換える事例が見られる。
デマンド型の公共交通とは、決まった時間に決まった路線を走るバスとは異なり、利用者の予約があった場合のみ運行する交通機関である。さまざまな運行形態があり、予約に応じてバスのように決まった路線を走るタイプや、路線は定めず乗降用の停留所だけを定め、その間を要望に応じて運行する形、さらに指定エリア内でドアtoドアの運行を行うタイプなどがある。
バスから置き換え進むが…
各自治体が、路線バスやコミュニティバスをデマンド型交通へ置き換える背景として、国土交通省が2011年4月から実施している「地域公共交通確保維持改善事業」が挙げられる。
ここでは新規に鉄道駅や既存の路線バスに接続するデマンド型交通を設定する場合、国から補助金が得られるようになった。そうなれば各自治体は、バスを廃止してデマンド型交通に置き換えようという心理が働く。予約に応じて運行するため乗客のいない便を走らせる必要がなく、バスに比べて運行コストを抑えられるのも、置き換えが進む理由である。
だが、このタイプの公共交通は決して万能とはいえない。利用には予約の手間が発生するうえ、そのために事前登録を求めている場合は、非居住者や個人情報を登録したくない居住者の利用を妨げることになる。まとまった予約が入れば、積み残しを出す可能性もある。
さらに、バスは利用者が増えればその分赤字が減るが、デマンド型交通の場合は利用者の増加が必ずしも歓迎すべきことにはならないという問題がある。利用が増えた際、バスのように1台に複数人が乗るのではなく、それぞれ別の小型車両に乗車すれば、それだけ運行経費も増えるためである。
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