過疎地の足「デマンド交通」は万能ではない 利用者少ない地域でタクシーを使う事例も

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現在は合併により滋賀県米原市の一部となった旧山東町では、かつて高齢者の外出を促進する目的から、ミニバスを用いて「カモンバス」というコミュニティバスを運行していた。その後の利用者減少などを受け、同町はコミュニティバス時代のバス停を活用し、決まったルートと一定のダイヤを設定したうえで、予約があった便のみ運行するデマンド型交通「カモン号」に置き換えた。

このシステムの変更により、利用する際には電話で事前予約が必要になったほか、住所・氏名・年齢・電話番号などが書かれた「登録証」を、乗車時に運転手に提示することも必要になった。これによって、非居住者の利用を事実上排除しただけでなく、登録証で個人情報を知られることを嫌って利用登録をしない居住者が出るといった弊害が生じるようになった。

システム統一で登録制を廃止

旧山東町は2005年に米原町などと合併して米原市となり、同市内には「カモン号」と、旧米原町が運行していた「まいちゃん号」の2つのデマンド型交通が引き継がれた。両者で料金が異なると不公平が生じるため、利用料は300円に統一されたが、この2つのデマンド型交通は運行地域だけでなく、利用システムも異なった。

米原市の玄関口・米原駅。「まいちゃん号」の発着点にもなっている(写真:宗 / PIXTA)

伊吹・山東地域を走る「カモン号」が路線とダイヤ、停留所を定めた方式なのに対し、米原・近江地域の「まいちゃん号」は停留所(乗降地点)は定めているものの路線は決まっておらず、予約に応じて各停留所間を最短で結ぶルートを運行する方式となっていた。さらに、両地域間の直接乗り入れもできなかった。

だが、米原市内は人口密度が低いため路線バスの運行が成立しにくい環境であり、市内の公共交通の充実にはデマンド型交通で対応する必要があった。そこで利便性向上のため、2017年10月1日から市内のデマンド型交通は「まいちゃん号」に統一された。この際に登録制は廃止され、予約さえすれば誰でも利用できるようになった。

一方、運賃は従来300円均一であったが、初乗り500円から500円刻みで運賃が上がり、最高は2000円となった。これは旧「まいちゃん号」時代、運賃収入では運行経費の8%程度しか賄えなかったうえ、運賃が安すぎると地元タクシー業者の反発もあるためである。

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