プーチン大統領が北朝鮮との会談を急ぐワケ 北朝鮮とロシアが初の首脳会談開催へ
金正恩氏の訪露を初めて招請したのは今年5月、セルゲイ・ラブロフ外相が訪朝したときだ。驚くべきことに、ラブロフ氏の訪朝は北朝鮮側から直前になってキャンセルされ、その後、さまざまな外交努力によって復活したものだとする情報がある。
朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」が当時、ラブロフ氏の訪朝を事前に伝えるという異例の対応をとっていたことを考えれば、この情報は確かだろう。金正恩氏と平壌で会談したラブロフ氏は、金正恩氏をロシアに招待したが、北朝鮮からは何の反応もなかった。
カギとなるのはタイミング
訪露の招請は、8月15日の祖国解放記念日に寄せたプーチン氏の祝辞でも繰り返された。祝辞の中でプーチン氏は、近いうちに金正恩氏と会談したいという希望を伝えている。これに対し金正恩氏は祝辞について感謝を述べる一方、招待を受けるかどうかについては、またもや態度を明らかにしなかった。
さらに9月11~13日にウラジオストクで開催された東方経済フォーラム(ロシアが主催する国際会議)への出席を金正恩氏が見送ったことで、ロシアは外交的に恥をかかされることになった。ロシア政府はこのとき、金正恩氏が参加を見送ったのは南北首脳会談が重なったため、と説明していた。しかし、実際に南北首脳会談が行われたのは、この1週間後。東方経済フォーラムには韓国の文氏も欠席。韓国の大統領が参加を見送るのは2年ぶりの出来事となった。
北朝鮮がロシアの呼びかけに応じたのは、ワレンチナ・マトビエンコ上院議長が9月9日の建国70周年式典に出席するために訪朝し、金正恩氏と会談してからのようだ。金正恩氏がプーチン氏からの招待を受け入れたと語ったのがマトビエンコ氏であった点にも留意する必要がある。首脳会談実施について何らかの文書が示されているわけではなく、北朝鮮側もまだ首脳会談の開催を公式には認めていない。
金正恩氏とプーチン氏の首脳会談でカギとなるのがタイミングだ。各種報道によると、早ければアメリカの中間選挙前に実施される可能性があった。一見すると特に変わったスケジュールではないが、中間選挙後には2回目の米朝首脳会談が控える。つまり、金正恩氏がトランプ氏と再会する前にプーチン氏との会談を何としても実現しておきたい、というのがロシア側の狙いなのは明らかだ。
米朝首脳会談に影響を与えるためである。ロシアと北朝鮮は金正恩・プーチン会談を使って、北朝鮮は核・ミサイル実験を凍結したのだから制裁は緩和されて当然、という共通の立場をあらためて打ち出してくる公算が大きい。