プーチン大統領が北朝鮮との会談を急ぐワケ 北朝鮮とロシアが初の首脳会談開催へ

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ロシアが首脳会談を急いでいるのには別の理由もある。金正恩氏がプーチン氏と初会談を果たす前にトランプ氏と再会することになれば、中国の習氏、韓国の文氏に続いてアメリカのトランプ氏までもが金正恩氏と複数回会談したことになり、ロシア軽視が浮き彫りとなってしまう。

ロシア政府にとっては、まさに沽券にかかわる問題だ。北朝鮮政府としても、国連安保理常任理事国として北朝鮮をかばってくれているロシアとの関係をこじらせるつもりはないだろう。

場所も気になるところだ。今のところモスクワかウラジオストクになるとみられているが、プーチン氏が平壌に飛ぶ可能性もなくはない。実際、2000年に当時の金正日(キム・ジョンイル)総書記と会談したときはそうしている。2011年に金正日氏が当時のドミトリー・メドベージェフ大統領と会談したときのように、ロシア内の静かな郊外が開催地に選ばれる可能性もある。

ロシアは北朝鮮労働者を手放したくない

本稿執筆時点では北朝鮮側が会談についてコメントしていないため、内容を予測するにはロシア側の情報に頼らざるをえないのが実情だ。

プーチン氏は少し前に北朝鮮問題について聞かれ、次のように発言している。2回目の米朝首脳会談を支持する、「状況を和らげる最善の道はおそらく」、北朝鮮がアメリカの約束をもっと信じられるようにすることだ――。

プーチン氏は、韓国と北朝鮮の鉄道連結事業に加え、朝鮮半島を縦断するガスパイプライン敷設によるロシアからのガス輸出に言及。こうした経済協力が安全保障面や政治的な協力関係の基礎になる、とのロジックを掲げている。このため、金正恩氏との会談でも南北の鉄道連結やガスパイプラインが話題となる可能性は大いにある。仮に共同声明が採択されるようなら、主要な合意事項として盛り込まれることも十分に考えられる。

ロシアで働く北朝鮮出稼ぎ労働者の扱いも議題になりそうだ。2017年12月に国連で採択された北朝鮮に対する追加制裁決議は、北朝鮮労働者の送還期限を明確に定めており、ロシアは2019年12月23日までに北朝鮮労働者を一人残らず国外退去させなければならない。

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