青森・八戸の朝市が圧倒的に支持される理由

八戸市の観光需要支える「市民が育てた文化」

館鼻岸壁朝市が、収益エンジンとしてだけではなく、集客エンジンとしても機能し、観光客を八戸周辺各地へと回遊させる装置になっているのだ。当然、夜になると八戸市中心街の横丁も活況となる。朝市という特殊な時間帯の観光スポットということもあり、観光客と宿泊者数を伸ばし続けている要となっている。

その一方で、観光客の増加や近隣から訪れる訪問者が増加することで、駐車場の確保や、トイレをはじめとした衛生面の懸念も生じている。自主管理ゆえに、広大な駐車場管理、仮設トイレ、場内のごみ整理、場内放送などは協同組合でまかなわなければならない。

だが、これだけの観光コンテンツと化した同朝市を行政も放っておくわけではない。「移転のときに協力的ではなかったから、今さら歩み寄られてもなぁ」と上村さんは苦笑するが、多目的トイレを有する最新トイレ施設を整備するなど支援の姿勢を見せている。結果を出せば追認せざるをえないのだ。

後を絶たない出店希望者たち

また、敷地面積に限りがあるため、「これ以上の出店は不可能」と上村さんが話す一方で、八戸市周辺の名物を凝縮した見本市でもあり、多大な観光客を呼ぶ同朝市に出店したいという希望者は後を絶たない。

「誰かが退かない限りは出店できませんが、もし空きが生じた場合は、合議制で判断しています。申し込んだ順番は関係なく、朝市や地域への理解を考慮して決めます。人気店は1日で100万円を稼ぐこともあります。そのため地域貢献や地域活性などと称していたにもかかわらず、営利目的だけで朝市を利用する人もいる。これだけ大きくなると、不純な動機を抱いて出店を希望する人も増えてきますから、慎重にならざるをえない」(上村さん)

店舗1区画(横3m×縦6m)を1万1千円で出店するという破格の条件である館鼻岸壁朝市は、確かに集客次第で大きな利益を生む。出店料収入は光熱費を含めた運営管理費用に充てられている。行政主導では考えられない環境だ。

「この朝市のにぎわいや仕組みを学ぼうと、各地の行政等の方が視察に訪れるのですが、特殊なケースすぎると苦笑いするほどです」と、観光客の誘客促進を行う公益社団法人「八戸観光コンベンション協会」の宗前勝さんが語るように、館鼻岸壁朝市を、他地域でも行えるモデルケースとするのは難題だろう。それでも、「“市民が作って、市民が育てる”という発想がなければ地域活性化のエンジンは生まれづらいと思います」と宗前さんは話す。

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