青森・八戸の朝市が圧倒的に支持される理由 八戸市の観光需要支える「市民が育てた文化」

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そう語るのは、協同組合湊日曜朝市会理事長・上村隆雄さん。通常、朝市は市と朝市組合が連携を取りながら運営・管理をすることが一般的だが、同朝市は行政に頼ることなく、独自に開催をしているというから驚きだ。

青森県を動かした上村さんの情熱

もともと、館鼻岸壁朝市は、同じ八戸市内の湊町山手通り沿いに展開していた湊日曜朝市を前身とする。同じく自主管理型の朝市だったが、数千人が歩道に押し寄せるため、市から危険と判断され、移転先を探すことになる。

「自主管理、運営ですから市はあまり協力的ではなかった。候補地を探していると、県有地である八戸港に行きついた。当時、このスペースはゴミが転がっているような状況でしたが、湊日曜朝市に参加していた民間事業者だけで片付けることを決めたうえで、県にお願いした。平日は漁港として機能しているため、日曜の早朝限定の使用、かつ衛生面や安全面はしっかり守ります。ですから、どうしても民間だけでやらせてほしいと。そこだけは譲れなかった」(上村さん)

一念岩をも通す――。上村さんの熱意が通じ、県は日曜早朝限定の使用を合意。2004年、館鼻岸壁朝市として生まれ変わった。「われわれは何年も朝市をやってきたので、朝市がもたらす波及効果もわかっていた」と上村さんが強調するように、八戸市は今現在も9つの朝市が開催されるほど朝市を中心に街が回っている。

興味深いことに、同市は江戸時代から市が盛んに開かれ、近代へと移り変わるとともに漁港の町として変貌するのだが、漁師に合わせる形で朝市をはじめとした早朝文化が作られた背景を持つ。総務省統計局調査では、青森は47都道府県で最も起床時間が早い県として発表され、ブックセンターは9時にオープン、銭湯にいたっては市内にある銭湯組合加盟店37のうち半数以上が早朝5時、6時に開店するという早朝大国なのだ。

本格パンがズラリと並ぶ。総菜、焼き鳥、インド料理など何でもある。ポイ捨てはなく、ゴミは朝市会がきちんと処理している(筆者撮影)

「八戸は朝が面白い」と上村さんは笑い、「朝早くから起きているのは民間人。だったら、朝の魅力を知っている民間人が、朝市の環境を作ることが望ましい」と続ける。八戸の歴史は、夜ではなく朝に作られてきたというわけである。

高齢者だけではなく、今や幅広い年齢層が館鼻岸壁朝市を訪れる。カップルと思しき男女が、魚の炭火焼きを片手に早朝デートをする姿も当たり前の風景だ。2013年の八戸短期大学研究では、宿泊をはじめとした観光関連の年間収入額は2.5億円。「はちのへエリア観光マーケティング調査」が行ったアンケート結果では、八戸市近隣の訪問に対して全体の80%を超える観光客が、「とても満足」または「満足」と回答している。

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