ジムニーになれなかったパジェロミニの悲哀 あの本格4WD軽自動車が現存していたら

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スズキの一時代を支えた画期的な商品の1つがジムニーであり、鈴木修会長の発想から生まれた車種を、簡単に終えるわけにはいかないといった社内事情もあったかもしれない。存続のため、モデルチェンジの周期は極めて長く、2代目は11年後、3代目は17年後、そして現行の4代目は20年後という、新車効果に依存することのない粘り強い販売が続けられてきた。これは、三菱パジェロミニとの比較だけでなく、ほかのどの自動車メーカーもまねのできない取り組みといえるのではないだろうか。

本格的4輪駆動車の本家といえるジープも、軍用ジープから民政用として1945年に「シビリアン・ジープ」が発売され、その後、1987年に「ジープ・ラングラー」が後継として受け継いで以降、ほぼ10年ごとのモデルチェンジ周期となっている。

パジェロミニは、誕生時期のバブル経済や、リコール隠し問題含め、さまざまな情勢によってジムニーと同じ道を歩むことは難しかったといえるだろう。そして今、三菱の軽自動車は2011年設立のNMKVという日産との合弁会社によって開発が進められている。その中で本格的4輪駆動車の軽自動車を復活させることも難しいだろう。

今の時代に希望の夢となるのは

一方で、プラグインハイブリッド車の「アウトランダーPHEV」は国内外で堅調な販売を続けている。その電動化の要素技術は、軽EVのi‐MiEVを基にしている。片や日産は、「リーフ」によって世界で最もEV販売台数の多いメーカーである。この2つを組み合わせ、EVの本格的4輪駆動の軽という商品を誕生させれば、独創的な存在となりうる可能性がなくはない。

実は、日本EVクラブの会員の1人は、エンジン車のジムニーを電動化して南極点を目指そうとしている。そのような冒険が今の時代には希望の夢となる。

パジェロミニでもジムニーでも、軽の本格的電動4輪駆動車が誕生したら、それはそれで、安価で環境に優しく、そして面白いクルマ生活や冒険を考えることができるのではないか。少なくとも未開の荒野へ旅立つのではなく、郊外の自然に囲まれた地で生活したり、林業に従事したりする範囲の利用であれば、ガソリンスタンド軒数が半減した今日、自宅や事業所で充電し、モーターで未舗装路を走れる軽自動車の4輪駆動車は重宝するのではないだろうか。モーターの駆動力制御は、エンジンより緻密にもできるはずだ。

まして日産や三菱なら、EVの知見は豊富に持っている。テスラ「モデルX」やジャガー「I‐PACE」のようなSUVでは、EV化がすでに実現している。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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