もう円高には戻らない みずほ総研チーフエコノミスト・高田創氏に聞く①

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――薪が乾くのが2015年3月期(来年度)ということですね。

企業が自信を取り戻し、一方で政策のほうも湿った薪が乾くことを支援するようになってくると、新しい行動に移れると思います。繰り返しになりますが、『日本経済の明日を読む2014』でも触れているように、13年は「失われた20年」からの脱却に大きく踏み出した年ではありますが、本格的に変わるのは14年度となります。

もう円高には戻らない

――再び円高に逆戻りしませんか?

ええ、間違いないです。そもそも円高はアメリカに原因がありました。2007年以降、アメリカが金融危機に陥った。つまり重篤な病気にかかってしまった。その治癒のために金融緩和が必要だった。金融緩和にはドル安誘導が必要不可欠だったから、アメリカはドル安誘導に邁進しました。アメリカだけでなく欧州も病み、欧米の先進各国がオリンピックさながらに、自国通貨安誘導を競い合いました。

――そういう中で日本は自国通貨安誘導競争、金融緩和オリンピックに負けていたと。

そうです。たとえば、コンサートホールで前の席の人が立ち上がってしまったら、自分も立たないとステージは見えませんよね。この6年間、日本は周囲が総立ちの中で、お行儀よく着席していたようなものだったのです。

――円安に転じたということは、その自国通貨安誘導競争が終わったということでしょうか

そうです。欧州はまだ入院・療養中ですが、アメリカが無事退院してくれた効果だと思います。

――円安はアベノミクス効果によるものではない?

本質的にはアメリカのバランスシート調整が終わったことが最大の原因です。結局のところ、為替はアメリカで決まってしまいますからね。

――なるほど。では安倍首相は、たまたまアメリカが“退院”したタイミングで首相になった、ラッキーな人ということですか。

そういう面はありますね。でも、アメリカがドル安誘導の手を緩めた、そのタイミングでしっかり異次元の金融緩和をやった。逆風から追い風に変わった、まさに潮目の転換点をうまくとらえ、市場のマインド転換を後押しする施策を実施し、また円高に戻るのではないかというムードを一掃した効果は大きいと思います。

次回(11月25日掲載予定)に続く。次回は、ドル円相場など2014年の為替水準を、具体的にどの程度に考えるべきか。投資をするとしたら、どういう国などがいいのかなどについて、高田さんが予測します。

 

『日本経済の明日を読む 2014』
みずほ総合研究所 著
2014年の内外経済・金融の最新動向を知るのに役立つ一冊です。
  今回インタビューに登場している高田創・チーフエコノミストによる「脱『失われた20年』の展望」をはじめ、消費増税、円安効果、デフレ脱却、構造改革、海外経済の注目点などを、幅広く解説しています。
 

 

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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