もう円高には戻らない

みずほ総研チーフエコノミスト・高田創氏に聞く①

――来年度の2015年3月期ですか。とすると、14年の4月から始まる期の経営計画で、期初からダッシュをかけろと。

そうです。そのためには14年1月~3月の準備が非常に重要になるし、この3カ月に効果的な準備をしようとしたら、「マインドの転換」はもう年内に済ませておかないと間に合いません。

いまはまだ、「薪が湿った状態」

――躊躇していたら流れに乗り遅れるわけですね。

そうです。今はまだ、また円高が再来するんじゃないかとか、設備投資をやったとたんに需要が冷え込むんじゃないかというほうへ考えが向いてしまいますよね。タイムリーに設備投資をしておかなかったら後でチャンスを逃してしまうのでは、とは考えない。それって、「薪が湿っている」状態だと思うのですよ。湿っていると火がつきにくいでしょう?

でも、完全に乾いたら一気に燃え上がる。別の例を挙げると、たらいの水に氷を浮かべると、氷が完全に溶けるまでの間は、たらいの水の(氷と接している面の)温度は、零度のままでしょう?

でもすべて溶けた瞬間からどんどん(その部分の)水温が上がっていく。乾いてから、あるいは溶けてからアクションを起こしたんじゃ間に合わない。乾く前に、あるいは溶ける前に準備をしていなければだめなんです。

――マインドを変えるなら「今でしょ」ですね。

そうです。先行きへの不安感を理由に引きこもるのは、「草食系的ペシミズム」の典型的な症状ですよ。

「円安」「株・不動産高」がマインドを変える

――薪が乾くことや氷が溶けることでマインドが変わるということだと思いますが、それらの手段は何ですか?

今で言うと、「円安」「株・不動産高」です。つまり円安が進み、マネーが行き渡るまでの、期待先行かもしれないけれども、株・不動産と価格水準が高まることが大事だと思います。図をご覧下さい。

これまでは円高でしかも、ずっと資産デフレという状況が続いていたので、そういった状況下では企業はバランスシート(貸借対照表)を圧縮しました。

バランスシートを両立てで圧縮するということは資産を持たない、債務を圧縮するという行動に出たわけです。

一方、P/L(損益計算書)では、円高の環境下でも生き残るために、「値上げをしてはいけない」「経費を圧縮する」(結果として)「利益がマージンが圧縮された」という行動様式が、この20年間の中で身についてしまった。こういう状況が続く限り、賃金は増えないし、デフレになる、債務を圧縮するから(銀行等による)信用活動も成果が上がらない。

ということは、最初に戻りますが、企業行動のマインドが変わらないと、先に挙げた湿った薪も乾かないということでもあり、ではそれを乾かす手段が「もう円高はないよと円安基調が定着することと、(株・不動産といった)資産価格も上がるよ」ということ、しかもそういった状況が、長期政権の下で「長く続く」という期待感ということになります。それらによって「(円高の心配をしなくても)大丈夫」だと企業が安心して、失っていた自信を取り戻すことが重要だと思います。

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