「トランプ勝利」でも株の反発は長続きしない 今回はITバブル崩壊やリーマンと何が違うか
ここまでの状況はどちらかというと、後者のリーマンショックではなく、前者のハイテクバブル崩壊に似ている。ただし2000年以降の過去2回の大きな下げ相場と決定的に違うことがある。それはリーマンショックで生み出された膨大な流動性の存在だ。トランプラリーのフォーメーションが健在なら、この流動性は相場を支えることになる。
トランプラリーの本質は「ええじゃないか」
ではそのトランプラリーのフォーメーションについて確認しておきたい。
そもそもトランプラリーとは何か。これはリーマンショック後、緊急処置(QE1)の後、オバマ政権下のQE2(量的金融緩和第2弾)でたまった資金が、まさかのトランプ勝利に歓喜した共和党支持者によって「解凍してあふれ出た現象」と考えてよい。
確かにオバマ時代も株は上がった。しかし規制が残り、共和党支持者には不満がくすぶっていたのである。そこにトランプ政権が誕生した。真っ先に大幅減税をぶち上げたことで資金は動き出した。その際、株式市場では、手数料の高いアクテイブ系のヘッジファンドではなく、ETF(上場投資信託)を使ったインデックス運用中心のパッシブ系ファンドに流れ込んだことが肝だった。
なぜなら、パッシブ運用者にとっていちばん困るのは、インデックスが先に上がり自分が置いてきぼりなること。インデックスが下がるならパッシブ運用者は購入者に言い訳ができる。でも上がると言い訳ができない。インデックス買いは次の買いを呼んだ(メルトアップ現象)。
ただし、個人的には、トランプ勝利後に寄稿した記事「2017年に『トランプ大暴落』は起きるのか」でも示唆したように、当初トランプ政権は、再選を達成したレーガンとG・W・ブッシュ両政権の相場のマネジメントを踏襲するのではないかと考えた。つまり、レーガン政権は1981~1982年にかけて18%の下落、ブッシュ政権は2001~2002年にかけて35%の下落に直面した。しかし最初の中間選挙前後でボトムをつけると、そこから減税などの株価対策をどんどん打ち出した。
このタイムマネジメントに対し、スタートから1年半でいきなり26%も株が上昇してしまったのがジョージ・H・W・ブッシュ大統領だった。株をずっと支えることはできない。中間選挙後から株の下落が始まり、その後持ち直したものの、パパブッシュは再選に失敗した。
もちろんトランプ政権はこのヒストリーは知っている。トランプ大統領自身、政権発足直後はまったく株高を口にしなかった。だが勢いが止まらないのを見てか、方針を変えたのだろう。株高を自分の偉業として前面に出すようになった。その現象がピークになった2017年の夏。市場のムードは、あたかも人気アニメ『銀河鉄道999』が重力のない宇宙空間を旅するようなすばらしい状態だった。そしてその資産効果が実態経済にも好影響を与えた。それがグローバルシンクロナイズである。ただし根底はオバマ時代にはなかった「ええじゃないか」のマインドである。
これに反応したのがFEDだった。すでに利上げは始まっていたが、直前まではミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁のように、FOMC(米公開市場委員会)の投票メンバーの中にも利上げよりバランスシート削減を優先させるべきとの意見もあった。しかし実態経済でグローバルシンクロナイズが始まり、FED内で利上げに反対する声は消えた。
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