「トランプ勝利」でも株の反発は長続きしない 今回はITバブル崩壊やリーマンと何が違うか
それでもトランプラリーがここまで続いた最大の要因は、長期金利がさほど上がらなかったからである。経済学からマーケットを語る人は「長短イールドスプレッド(金利差)の縮小は、近未来の実体経済のスローダウンの示唆であり、株にはマイナス要因)というストーリーを語り続けている。確かにスローダウンの示唆であること自体は否定しない。
だが今の現実のマーケットでは、イールドスプレッドの縮小は株の下げ要因にはならない。FF金利(短期の政策基準金利)の上昇は、FEDから数兆円規模の当座預金の余剰資金への金利が付与される大手銀行には「飴玉」である。そして中長期金利が低いかぎり、住宅市場も安泰だ。ところが、長期金利が上がりだすと住宅市場が崩れる。すると個人消費が落ち込む。アマゾンに主役の座をとって代わられた小売りには最後の時が訪れる。時代を築いたシアーズホールディングスは倒産、そして今JCペニーの株価は1ドル台だ。商業用不動産を担保にしている銀行は厳しい立場に置かれる。長期金利が上がると、株は下がる。個人的にはそれをずっと主張してきた。
ならば、金利の引き上げを止めればどうなるか。最初に影響を受けるのは為替だろう。アメリカのドル高は終わる。ドル高はインフレ抑制効果があるが、ドル安になればインフレの芽も出てくる。今度はそれを理由に長期金利が上がってしまう。その前にFEDが弱気になり、金利引き上げの打ち止めを示唆すると、アメリカ債市場に溜まった債券のプロたちのフラットニングのポジションの解消につながる(=短期を買いなおし、持っていた長期債を売る)。これも長期金利の上昇要因になる。だからFEDは安易に弱気を示すことはできない。だから株式プレーヤーも、株が多少下がったからといって、リーマンの時のように、困ったらFEDが救済に入ること考えるのは間違いだ。
インデックスファンドの売却も検討を
ではどうしたらいいか。インデックスファンドを持っているならいったんは売却も検討するべきだろう。本来インデックスファンドはリスク分散が目的だ。しかしアメリカの上場企業数はピーク時1997年の約7300社から今は半分以下まで減っている。それだけ淘汰された一方で1社当たりの時価総額は増えたわけだが、それをETFで操ることでインデックスは激しく動く。にもかかわらず、前述のようにパッシブ系運用を同時にやったらリスク分散にはならない。
つまり、今最も危険な投資はインデックスファンドのイメージに安心してしまうことだ。一方、売りでも買いでも食らいつくなら、参考にすべきはダウの輸送指数(20種平均)だろう。いわゆるFANG株を先頭にNASDAQ上場の銘柄が売られても、ニューヨークダウが踏みとどまればNASDAQも戻ってくる。それが過去2回の下げ相場での底打ちのパターンだ。ならば1万ポイント前後まで調整している輸送指数が、2008年からのトレンドライン (8500~9000)で下げ止まり、切り返すかどうかを見極める時だ。
今回は、テクニカル面から長期金利上昇のパターンの解説をした。次回は、金利上昇の理由がインフレなのか、それとも財政赤字拡大(需給)なのかで下落相場への考え方が変わることを解説しよう。それに関連してアメリカの2極化が財政赤字論を演出している背景を紹介したい。
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