「トランプ勝利」でも株の反発は長続きしない 今回はITバブル崩壊やリーマンと何が違うか

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2000年以降、アメリカ株が大幅調整となったのは、2002年のハイテク(IT)バブル崩壊と2008年のリーマンショックだ。前者はオーバーバリュエーション(業績などを考慮した株価指標と比べて買われすぎること)の調整、後者はグローバル金融システムの崩壊の危機だった。

ITバブル崩壊は「病気」、リーマンは「緊急大出血のケガ」

簡単に言えば、前者は「病気」、後者は「大出血を伴う大ケガ」のようなものだ。

2001年、アメリカは共和党のJ・W・ブッシュ政権になったが、ハイテク銘柄のバブルが崩壊することで、上げ相場では隠れていたウォール街の不正や会計疑惑などが噴出した。

この時の民主党は2000年の大統領選で「アル・ゴア大統領」になるはずの大統領職をブッシュ氏にかすめ取られたという怒りに満ちていた。そんな中で民主党の将来の大統領候補とも目されたNY州司法長官のエリオット・スピッツァー氏は、果敢にウォール街の不正に大ナタを振るった。シティグループのサンディ・ワイル会長、AIGのモーリス・グリーンバーグ会長、メリルリンチのデービッド・コマンスキー会長らウォール街の超大物経営者が引退に追い込まれた。

この騒動の結果、株の下落はハイテク銘柄からジワジワと優良銘柄へも拡大。 AT&Tを倒す勢いだったワールドコム、そしてあのエンロン、最後はエンロンにかかわった大手監査法人のアーサーアンダーセンまで倒産した。ただこの時は大手金融機関に目立った倒産劇はなかった。

一方、リーマンショックは、大手証券会社のリーマンブラザーズではなく大手保険AIGグループの破綻危機が本質だった。AIGはCDS(相手が破綻した場合、その損失をカバーするデリバティブ契約)を大量に引き受けていた。そのAIGが破綻の危機に瀕し、リーマン同様、膨大な信用取引にのめり込んだ欧米の大手金融機関に連鎖倒産の危機が迫った。その時、リーマンが犠牲になることで、国家としてアメリカは前例のない救済に乗り出した。FED(アメリカの中央銀行)による未曾有のドル資金の供給は「緊急輸血」であり、それがQE1(量的金融緩和第1弾)だった。

後者のリーマンショックから10年。2016年にトランプ氏が大統領選に勝利した後は「トランプラリー」と言われた株高現象が起き、2016年のBrexit(英国のEU離脱)を起点としたトレンドライン上で推移してきた。だが今回の下落で主要株式指数はそのトレンドラインをついに下回ってきた。

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