AKB48「大西桃香」、動画配信で覚醒した612日

朝5時半から始まるシンデレラ・ストーリー

大西さんがチーム8のオーディションに合格し、AKB48に加わったのが2014年である。振り返ってみれば、それからの2年間も、「うらやましいな」の連続だった。中学生のころからAKB48のファンであり、好きが高じて受けたオーディションで、本人も驚くまさかの合格。しかし、憧れのアイドルの世界は、甘くなかった。

「私はほかのお仕事とか、握手会、イベントにも呼ばれなかったので、お仕事がなくて。特にかわいいわけでもないし、ダンスができるわけでもないし、歌ができるわけでもない。何もできないから、アピールしたくてもする場がなくて、ファンの方とコミュニケーションを取る機会もない。だからとにかく、ファンの方と何か喋りたいと思っていました」

AKB48に入って自覚した、「ないないづくし」の自分。そんな自分でも応援してくれるファンがいる。なかなか交流する機会のないその人たちと出会えるのがSHOWROOMだったから、自由に配信できないことに対していつももどかしさを感じていた。SHOWROOMの「解禁」は、大西さんにとって、自身の「解放」を意味していたのだ。

解放されたら、飛び出したくなる。なかなか来ないスタッフからの折り返しにしびれを切らした大西さんは、「もうええわ!」と腹をくくり、SHOWROOMで配信を始めてしまった。普段は決して大胆なタイプではない大西さんがそこまで思い切った行動をとったのは、初めてのことだった。ここから大西さんのシンデレラ・ストーリーが始まった。

念願だったツールを手にしてから・・・

SHOWROOMを通して、ずっと待ち望んでいたファンとの接点を得た大西さんは、スタッフからの許可が降りたこともあり、初めての配信の翌日、何と朝5時から再び配信を始めた。幼いころから朝が苦手だったのに、4時半に起きて配信するのは、ちっとも苦にならなかった。間もなく5時半からの配信に変更したが、それは朝がつらかったからでなく、朝イチから見てくれるファンに配慮してのことだった。

「自分は何もできないからこそ、ファンの方とコミュニケーションを取る機会がほしかった」(撮影:今祥雄)

「もともと低血圧で、朝はすごくテンションが低いし、本当に朝が苦手で、幼稚園のときからギリギリの時間に登園していました。でも、配信を始めてからは、起きるのがしんどいというのはなくて。ファンの方とコミュニケーションを取るのがすごく楽しかったんです」

自分が楽しむだけでなく、ファンに楽しんでもらうために、大西さんはSHOWROOMで試行錯誤を重ねた。

「喋っているだけなのはイヤで、知名度を上げたかったから、コーナーとか企画を考えたら、それを楽しみに見に来てくれるんじゃないかなって、いろいろやりました。最初のころはすっごくエゴサーチもしてて、ファンの方のコメントを見ながら、もっとこうしたら盛り上がったんじゃないか、明日はもっとこうしようって、決めたりしていました」

そして1週間、2週間、1カ月と配信を続けるうちに、5時半からの配信を閲覧するファンが少しずつ増えていった。早朝、睡眠時間を削って自分のことを待っている人がいるという事実は、ファンとの交流に飢えていた大西さんにとって、これ以上ないやりがいとなった。ファンと交流できるのが嬉しくて始めた5時半からの配信は、大西さんにとっても毎日の楽しい日課に変わっていった。

次ページファンとはカップルだから素顔をさらせる
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • CSR企業総覧
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • 日本野球の今そこにある危機
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
ストロング系チューハイの光と影
ストロング系チューハイの光と影
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
人材戦略から儲けのからくり<br>まで コンサル全解明

人材の争奪戦が過熱し、年収水準もうなぎ登りに。デジタル化を背景にコンサルティング業界は空前の活況を呈しています。本特集ではコンサル業界の動向やビジネスモデルを徹底解説。コンサル会社を賢く選び、上手に活用していくノウハウを紹介します。

東洋経済education×ICT