「防災食」のごはんがおいしくなったワケ 亀田製菓、アサヒGHDに続き永谷園も参戦

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フリーズドライとは、食品を真空状態で冷凍や乾燥させたもの。乾燥時に熱を加えないため、アルファ米に比べて風味、品質の劣化が起こりにくいのが特長だ。

永谷園の防災食ビジネスは、2016年に同社の工場があり災害協定を結んでいた三重県松阪市にフリーズドライの備蓄米を納入したことで始まった。生産態勢が整った2017年からは、一般向けにも販売を開始している。

永谷園の防災食の売上高は2017年度に2億円ほどだったが、今2018年度は4億円、来2019年度は8億円と、倍々での成長を見込んでいる。

フリーズドライ食品には冷凍過程が必要なため、アルファ米に比べて短時間での大量生産は難しい。そうした製造工程の違いから価格も高くなりがちで、自治体への納入のための入札では安価なアルファ米に軍配が上がることが多い。

ただ、フリーズドライ米はアルファ米に比べて調理時間が圧倒的に短いのがメリットだ。お湯なら3分、水でも5分で出来上がる。「自治体との取引を増やすことに加えて、一般の方向けに登山時の食事としてもメリットを訴求していく」(業務用営業部の加藤光治氏)。

家庭向けをどこまで開拓できるか

「アマノフーズ」ブランドでフリーズドライ食品を展開するアサヒグループ食品は、2015年から家庭用の防災食に力を入れ始めた。

アマノフーズは、かつて天野実業の名前で事業を展開していた。1970年代からカップラーメンの具材を手掛け、1980年代からはフリーズドライみそ汁などのスープ類を製造している。2008年にアサヒグループ入りし、傘下の食品子会社と経営統合し、アサヒグループ食品となって現在に至る。

自治体向けの取引は数件と少ないが、「専用のセットを作って、日頃からフリーズドライ食品を消費しながら備える“ローリングストック”を消費者向けに推奨している」(食品事業本部の武田喜英氏)。

同社のフリーズドライ商品はスープ類を中心に150種類以上。「災害時にも普段と同じようなものが食べたい」という需要の取り込みを狙っている。

防災意識の高まりで成長を続ける防災食市場。新規参入によって、白米に限らずさまざまな食品が出始めている。職場や家庭での防災対策を見直すいい機会かもしれない。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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