株価急落は「強気相場の終焉」のサインか? 米中貿易戦争の影に怯え、調整は繰り返す

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一方、今年2月や10月初頭の米国株急落は、長期金利の上昇が引き金となった。金利上昇(割引率上昇)はバリュエーション(企業価値算定方法)の上でマイナスに働くほか、金利負担が膨らみ、設備投資の減速につながる。長期金利の上昇は、景気回復と低金利が共存する「適温相場の終焉」と受け止められ、株価下落に結び付いていた。

だが、これについては今後の心配は減りそうだ。FRB(米国連邦準備制度理事会)は、QE(量的緩和政策)で膨らんだ保有資産の縮小を2017年10月から開始。長期金利が上昇する展開となっていた。ただ、「縮小規模の段階的増加は今年10月で打ち止め。そのため、今後は鋭角的な長期金利の上昇は起きにくい」(大和総研の小林俊介エコノミスト)。

米国経済や企業業績、長期金利の動向をみる限り、米国株式市場が本格的な下げ相場に突入する証拠とはなりにくい。ただ、スピード調整を終えた相場が今後、一本調子に復調を続けるかと言えば、それもノーだろう。どうしても残る懸念材料は、やはり米中貿易戦争である。

取引材料は北朝鮮「口撃」?

「米中貿易戦争に関する安心材料が出るか、あるいはネガティブな情報が出尽くさないと、米国の株価は底入れしにくい」と小林氏は語る。その点注目は、11月に開催される20カ国・地域(G20)首脳会合でトランプ米大統領と習近平中国国家主席の首脳会談が実現するか否かだ。米中冷戦は続くものの、短期的に緊張の緩和があれば、株価はポジティブに反応する。

「『対中制裁の拡大をしばらくやめてください』と中国が言うとしたら、トランプ大統領は何を代わりに要求するか。確証はないが、北朝鮮がらみではないか」と小林氏は予想する。

トランプ大統領は中間選挙に向けて、北朝鮮政策の成功を自賛しているが、実際には北朝鮮の核開発は止まっていない。中間選挙の最中、「成功」させたとする北朝鮮政策でこの事実を認めたくないが、11月6日に選挙が終わった途端、手の平を返すように北朝鮮を「口撃」するのではないかという見立てだ。その際、冬の到来を前に、中国に対してエネルギーや物資の輸出停止などの協力を求めるといったシナリオが考えられる。

今回の急落局面でも指摘されたことだが、株価のボラティリティ(変動率)が上がると、株式の保有比率を下げようと、ヘッジファンドなどが機械的な売りを仕掛けたり、銀行などがリスク資産圧縮のために株式を売ったりする動きが顕在化する。それによって、株価が一方向に動きやすい。当面は米中貿易戦争に関するポジティブなニュースとネガティブなニュースに反応して、株価が上下する展開が続きそうだ。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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